情報確認日:2026年10月15日
親の死亡後、遺産分割前に相続人の1人が預金を使っても、残金だけで分ける必要があるとは限りません。2019年7月1日以後に親が亡くなり、その後に相続人が処分した財産は、処分した人以外の相続人全員の同意で、遺産に残っているものとして分割できる場合があります。死亡前の出金や、誰が使ったか不明な出金は分けて整理します。
「存在するものとして分割」と、銀行への返金は違う
民法906条の2は、分割前に処分された遺産について、共同相続人の同意により、分割時にも存在するとみなす仕組みを定めています。相続人が処分した場合、その本人の同意は必要ありません。
例えば、相続人が子2人で、死亡時の預金が1,000万円、その後に一方が200万円を自分のために引き出した場合を考えます。条件を満たして200万円を遺産へ算入できれば、残る800万円だけでなく、処分済み200万円を含めた分割を検討できます。これは仕組みを説明する仮定で、実際の取得額は他の遺産や争点も含めて決まります。
ただし、この制度を使えば銀行口座へ自動的に200万円が返る、という意味ではありません。処分済み財産を含めて誰がいくら取得するかを調整する仕組みです。返還請求の要否、相手が使った事実や額を争う場合の対応は、別途整理が必要です。
対象になる時期と、誰が処分したかを確かめる
大阪家庭裁判所の案内は、2019年7月1日以後に亡くなった人の遺産について、相続開始後に相続人が処分した財産を、処分者以外の相続人全員の合意で分割対象にできると説明しています。処分した相続人が確定していることも必要です。裁判所の説明資料・5〜6ページ
確認する順番は次のとおりです。
- 親の死亡日を確認する。
- 出金や売却が死亡前か、死亡後かを分ける。
- 処分した人が相続人か、誰なのかを確かめる。
- 処分された財産・金額と、その後の使途を整理する。
- 処分者以外の相続人全員が、遺産へ算入することに同意するか確認する。
死亡前に親自身が使ったお金、親の依頼による支払い、他人による無断出金は、同じ問題ではありません。「通帳に出金がある」だけで、特定の家族による使い込みや犯罪と決めつけないでください。
取引記録と領収書を、日付ごとに並べる
まず死亡時の残高が分かる資料と、その前後の取引履歴を銀行へ相談して集めます。請求資格・必要書類・発行手数料は銀行ごとに確認してください。家族のカードや暗証番号で新たに操作して調査する方法は避けます。
一覧には「日付、口座・財産、金額、処分者として確認できた人、使途の説明、裏付け資料」を記載します。不明な点は不明のまま残し、推測と確認済みの事実を分けます。
親の入院費、葬儀費、実家の管理費などの領収書も保管します。ただし、支出の名目が付いているだけで、全額を他の相続人へ負担させられるとは限りません。誰が契約し、誰の負担として合意したのかも争点になります。
裁判所の資料では、葬儀費用や遺産管理費用などは、相続人全員が合意すれば調停で扱える一方、当然に遺産分割審判の対象になるものではないと区別しています。
話合いがまとまらないときは、遺産分割と返還請求を切り分ける
共同相続人などは、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てられます。ほかの相続人全員を相手方にし、原則として相手方のうち1人の住所地、または当事者が合意した家庭裁判所へ申し立てます。不成立の場合は審判へ移行します。裁判所の遺産分割調停案内
申立費用は被相続人1人につき収入印紙1,200円と、連絡用の郵便料です。郵便料の額・納付方法は申立先で確認します。戸籍や取引履歴の取得費、弁護士へ依頼する場合の費用は別にかかります。
基本資料には申立書、戸籍、相続人の住民票等、遺産を証明する資料があります。法定相続情報一覧図で代替できる範囲や、戸籍の不足分を後から提出する扱いは裁判所の案内を確認します。
処分者が不明、死亡前の出金が中心、返還義務自体が争われている場合は、家庭裁判所での分割だけで解決しないことがあります。取引記録を持参し、弁護士へ「分割対象へ算入できるか」「別の民事請求が必要か」を相談してください。合意を待つ間にも別の請求権の期間が進む場合があるため、調査の終了まで相談を先送りしないことが大切です。
参照資料
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執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT
