相続・遺言・死後手続き

相続や遺言、死後手続きをイメージした書類フォルダー、封筒、鍵、実家のシンプルなイラスト

相続・遺言・死後手続きは、期限のある届出と、財産の全体像を確認してから進める手続きが混在しています。悲しみの中で全部を一度に終わらせようとせず、①死亡の届出と葬送、②財産・債務と遺言の確認、③相続するかどうかの判断、④名義・税・契約の手続きの順に整理します。

相続や遺言、死後手続きをイメージした書類フォルダー、封筒、鍵、実家のシンプルなイラスト

まず死亡直後にすること

死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡者の死亡地・本籍地または届出人の所在地の市区町村へ提出します。通常は死亡診断書または死体検案書が必要です。提出先や受付時間は自治体に確認します。

・死亡届、火葬許可に関する手続き、葬儀・納骨の予定
・病院、施設、葬儀社、寺院・墓地などへの連絡
・親の家、郵便物、鍵、冷蔵庫、ペット、植物、空き家の安全確保
・家族内の連絡役、手続きの記録係、費用を立て替える人

死亡直後は、通帳・印鑑・権利証・遺言書などを見つけても、処分・分配・解約を急がず、保管場所と発見日を記録します。葬儀費用などの支出は領収書を保管します。

最初に集める書類

・死亡診断書または死体検案書の写し、死亡届の控え
・亡くなった人の戸籍・除籍・改製原戸籍、住民票の除票
・相続人の戸籍、住民票、印鑑登録証明書
・通帳、証券、保険証券、年金証書、納税通知書、借入・保証・賃貸契約
・不動産の登記事項証明書、固定資産税資料、遺言書、遺産分割協議書の作成に向けた資料

原本を提出すると戻らない場合があります。提出前にコピーを取り、提出先、提出日、返却の有無を一覧表にします。戸籍を何度も提出する必要がある場合は、法務局の「法定相続情報証明制度」を検討します。戸除籍謄本等と相続関係の一覧図を提出すると、認証文付きの一覧図の写しを無料で受け取れる制度で、相続登記、銀行、相続税、年金などで利用できる場合があります。

遺言書を確認する

自宅、貸金庫、法務局の遺言書保管所、公正証書の記録など、遺言書がないかを確認します。見つけた遺言書は、書き換え・破棄・一部の相続人だけへの隠し渡しをせず、保管場所と状態を記録し、家庭裁判所や専門家へ確認します。

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合は、相続人等が遺言書情報証明書や遺言書保管事実証明書を請求でき、法務局保管の自筆証書遺言は検認が不要です。一方、法務局は遺言の内容が実体法上有効かどうかを判断する制度ではありません。内容に疑問がある場合は、司法書士・弁護士・公証人などに相談します。

遺言書があっても、遺留分、相続人の範囲、遺言執行者、財産の記載漏れなどの確認が必要な場合があります。家族だけで結論を急がないことが大切です。

相続するか、放棄するかを判断する

預金や不動産だけでなく、借入、保証、未払い、損害賠償などの債務も調べます。相続放棄は、原則として自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述します。調査しても判断できないときは、期間伸長の申立てができる場合があります。

「財産を少し受け取ってから放棄」「親の口座から自由に支出」など、相続の承認と評価される可能性のある行為は、自己判断で進めません。相続放棄を考える場合は、期限内に家庭裁判所の手続案内または弁護士へ相談します。

相続人が複数いる場合、相続放棄は各相続人が自分で判断する手続きです。誰か一人が放棄すれば全員が放棄したことになるわけではありません。

名義変更・解約を進める

相続人と遺言、財産・債務を整理した後、提出先ごとに必要書類を確認します。

・銀行・証券:死亡の連絡、利用停止や払戻し方法、相続人・遺言・遺産分割の確認
・生命保険:保険会社への連絡、保険金請求、受取人・請求期限・必要書類の確認
・年金:未支給年金、遺族年金等の対象確認と請求。年金事務所へ相談
・健康保険・介護保険:資格や保険料、給付、葬祭費・埋葬料などを市区町村や加入先へ確認
・不動産:遺産分割または遺言の内容を確認し、相続登記を申請
・自動車、賃貸住宅、電気・ガス・水道、携帯電話、インターネット、サブスク:契約者死亡の連絡と解約・名義変更
・デジタル資産:スマートフォン、メール、クラウド、暗号資産等は、証拠を消さないように確認し、契約先や専門家へ相談

解約するとデータや明細が失われる契約もあります。先に利用明細、残高、契約内容、解約日、返金・違約金を記録します。

相続登記には期限がある

相続登記は令和6年4月1日から義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。令和6年4月1日より前に相続した不動産で未登記のものも対象で、原則として令和9年3月31日までに申請が必要です。遺産分割協議がまとまらない場合などは、相続人申告登記を含む制度の利用を法務局・司法書士へ相談します。

不動産を売る・貸す・解体する前に、登記名義、共有者、抵当権、境界、税金、相続人全員の合意を確認します。

税の期限を確認する

・準確定申告:亡くなった人に申告が必要な所得がある場合、原則として相続の開始を知った日の翌日から4か月以内
・相続税:申告・納税が必要な場合、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内

相続税の申告が必要かは、財産の種類・評価・債務・葬式費用・基礎控除・特例などで変わります。期限が近くなってから財産を調べ始めると間に合わないことがあるため、早めに税務署または税理士へ相談します。

未支給年金を受け取った場合の税務など、受け取った人側の申告が必要になることもあります。個別の扱いは税務署・税理士に確認します。

3か月・4か月・10か月の予定表

死亡を知った日:死亡届、葬送、家・郵便・ペットの安全、遺言・財産の確認を開始
3か月以内:相続放棄・限定承認を検討し、必要なら家庭裁判所へ申述
4か月以内:必要な場合は準確定申告
10か月以内:必要な場合は相続税の申告・納税
3年以内:相続登記

期限は「死亡日」ではなく、制度ごとの起算点を確認します。休日等の扱い、相続人ごとの事情、遺言や遺産分割の有無によって変わる場合があるため、カレンダーに起算日と相談先を記録します。

相続手続きの記録表

・手続名、提出先、期限、必要書類
・担当者、連絡日、回答、提出日、受付番号
・原本を渡したか、返却予定日
・財産・債務、残高、評価額、保管場所
・費用、支払者、領収書の場所
・家族の合意事項と保留事項

専門家へ相談するときは、家族関係図、財産・債務の一覧、遺言書の有無、期限、いま困っている点を1枚にまとめます。

くわしく知る

このページの内容に関係する、個別の手続きを詳しく解説した記事です。

相談先を使い分ける

・死亡届・戸籍・国民健康保険・介護保険:市区町村
・相続放棄・遺言書の検認:家庭裁判所
・相続登記・法定相続情報・遺言書保管:法務局
・相続税・準確定申告:税務署・税理士
・遺産分割、遺言の内容、相続放棄の判断、債務・紛争:弁護士
・登記、遺産分割協議書、遺言書の形式など:司法書士等

相談先が分からないときは、市区町村の相続相談や法テラス等の案内を確認します。無料相談でも、相談できる範囲、予約、書類作成や代理の有無は窓口ごとに異なります。

参考にした公的情報

法務省「死亡届」
https://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILYREGISTER/5-4.html

法務局「法定相続情報証明制度」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html

法務省「自筆証書遺言書保管制度」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051

裁判所「相続の放棄の申述」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html?p=1708

日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html

国税庁「相続税の申告手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/2223-01.htm

国税庁「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru_sp/cat2/cat20/scid003.html

法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html

※この記事は、親の相続・遺言・死後手続きを考えるための一般的な情報整理を目的とした記事です。期限、必要書類、相続人の範囲、財産・債務の評価、遺言の効力、税の申告要否は個別に異なります。重要な判断や期限のある手続きは、家庭裁判所、法務局、市区町村、税務署、弁護士、司法書士、税理士などに確認してください。

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