情報確認日:2026年10月15日
疾病などで死亡の危急に迫った親が遺言をする場合、証人3人以上の立会いで本人の言葉を筆記する「危急時遺言」の方式があります。本人の意思と証人の資格、筆記・確認・署名押印などの要件が必要です。さらに、遺言の日から20日以内に、証人の一人または利害関係人が家裁へ確認を請求します。家族が希望を代筆するだけでは代わりになりません。治療・救急対応を優先し、可能な手続きを弁護士などへ急いで相談してください。
入院中なら、どの遺言も危急時遺言になるわけではない
民法976条が対象とするのは、疾病その他の事由によって「死亡の危急に迫った」人です。単に高齢である、入院している、文字を書きにくいということだけを、この条件と同じに扱いません。
通常の自筆証書遺言や公正証書遺言などが可能なら、その方法も含めて相談します。危急時遺言は、本人の意思を家族の話合いで置き換えたり、通常の遺言の要件を好きに省略したりする方法ではありません。
遺言をする時点で、本人に遺言をする能力が必要です。意識や意思の状態が変わりやすい場合は、医療者の情報と法律専門家の助言を受け、どのような状態で意思を述べたかを記録することが重要になります。
証人は「家族を3人集めればよい」ではない
危急時遺言には、3人以上の証人が立ち会います。証人の一人が本人から遺言の趣旨を聞き取り、筆記します。
遺言の証人には資格の制限があります。民法974条では、未成年者、推定相続人、遺言で財産を受け取る人、これらの配偶者・直系血族などを証人・立会人にできないと定めています。この規定は危急時遺言にも適用されます。
たとえば、相続人になる子が「自分が証人として記録する」と進めると、資格が問題になります。親が誰に財産を渡すのかを含め、証人の家族関係を確認してください。証人を集める役割と、自分が適格な証人になることは別です。
家族が内容を提案し、親が曖昧にうなずいただけの状況を、本人が自分の意思を述べたことと決めつけないでください。急いでいても、本人の希望と家族の希望を分けることが欠かせません。
本人の言葉を筆記し、内容を確かめる
法律の基本の流れは、次のとおりです。
- 証人3人以上の立会いで、本人が証人の一人に遺言の趣旨を口頭で述べます。
- 口頭の内容を受けた証人が筆記します。
- その筆記を本人と他の証人に読み聞かせるか、閲覧させます。
- 各証人が筆記の正確さを承認し、署名して印を押します。
録音だけを残す、家族のメモだけを保管するという方法で、この一連の要件を満たした扱いにはしません。遺言の内容を正確に残したうえで、誰が立ち会い、誰が筆記し、どのように確認したかを整理します。
口がきけない人については、通訳人の通訳を通じて本人が遺言の趣旨を述べる規定があります。本人や他の証人が耳を聞き取れない場合の伝達にも規定があります。家族がその場で独自の代替方式を決めず、障害や意思疎通の方法を法律専門家へ具体的に伝えてください。
20日は、家裁への確認請求の期限
危急時遺言は、遺言の日から20日以内に、証人の一人または利害関係人が家庭裁判所に請求して、確認を得る必要があります。20日以内に請求することが必要で、「20日以内に裁判所の審理がすべて終わる」という説明ではありません。
死亡した日から数える期限でもありません。本人が生きている間にも、確認請求の手続きを進めることがあります。遺言した日を記録し、作成後すぐに申立先へ連絡してください。
家事事件手続法209条では、生存中は本人の住所地、死亡後は相続が開始した地の家裁を管轄としています。子の住所地でよいと判断せず、本人の状況を伝えて確認します。
添付書類と申立費用をそろえる
名古屋家庭裁判所の掲載資料では、遺言の確認について、本人の戸籍・除籍、立会証人の住民票または戸籍附票、遺言書の写し、生存中なら診断書などを挙げています。証人以外が申し立てる場合は、利害関係を示す書類も関係します。
同資料の収入印紙は、確認対象の遺言ごとに800円です。郵便料、追加資料、提出する書式は申立先へ確認してください。診断書取得や専門家への依頼には別の費用がかかります。
戸籍の入手が間に合わない場合なども、20日という期限を過ぎるまで待つのではなく、家裁に相談します。誰が請求できるか、手元にある資料と不足書類を伝えると、提出準備を具体化できます。
家裁は、本人の真意に出た遺言かを確認する
民法976条は、家裁が本人の真意に出た遺言だとの心証を得なければ、確認できないと定めています。筆記した文書があれば、無条件で効力が生じるという扱いではありません。
この「確認」は、発見した遺言書の状態を記録する「検認」と違う手続きです。通常の検認を申し立てれば、危急時遺言に必要な確認請求をしたことになるわけではありません。確認後、死亡後の手続きや検認の扱いについても、家裁へ確認してください。
成年被後見人が、一時的に判断する能力を回復して遺言する場合には、医師2人以上の立会いなど、民法973条の追加条件があります。この条件も危急時遺言に適用されるため、後見の有無を相談時に伝えます。
回復後に6か月生存した場合の扱い
民法983条は、本人が普通の方式で遺言できるようになった時から6か月間生存した場合、特別の方式の遺言は効力を生じないと定めています。病院から退院した日や、危急時遺言を作った日から一律に6か月数えるという条件ではありません。
回復して通常の遺言を作成できる場合は、その方法を相談してください。本人の体調と意思、作成時の方式、家裁の確認、回復後の状態をそれぞれ分けて記録すると、後の相続手続きを進めやすくなります。
参照資料
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執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT
