情報確認日:2026年10月13日
相続放棄をした後も、放棄の時点で実際に占有している財産は、相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで保存する義務があります。すべての放棄者に一律の空き家管理義務が残るわけではありません。
実家で暮らしていた人、鍵を預かって実際に管理している人は、放棄の受理を確認する際に、自分の関わり方と引渡し先も相談してください。「放棄したから今日から無関係」と扱うと、残る義務を見落とすことがあります。
判断の出発点は、放棄したときの実際の占有
民法940条は、相続放棄した人が、そのとき現に占有している相続財産について、引渡しまで保存する義務を定めています。法務省の説明も、実際には占有していない人にまで一律の義務を負わせる趣旨ではないとしています。法務省の改正説明資料
「占有」は、財産を実際に支配・管理している状態を指します。ただし、鍵を持っているかどうか一つで結論を決めることはできません。住んでいた期間、出入りの状況、家財の保管、管理を任された経緯を弁護士へ伝え、判断を受けます。
遠方に住んでいるという理由だけで、自分には義務がないと決めることも避けましょう。実際に何をしていたかを説明できるようにします。
保存のための対応と、売却・解体は同じではない
保存義務は、財産を引き渡すまで維持するためのものです。放棄した人が所有者として自由に売却や解体を進められるという意味ではありません。
相談前には、建物の損傷、雨漏り、外れかけた部材など、分かる範囲の状態を写真で残します。危険な場所に入って調べる必要はありません。近隣への危険がある場合は、市区町村の空き家担当にも現状を伝え、緊急に必要な対応を確認します。
修繕を誰が依頼し、費用を誰が負担するかは、財産の状況や引渡し先と関係します。業者へ大きな工事を注文する前に、権限と支払いについて法律相談を受けてください。
次の相続人へ、鍵と管理の情報を引き渡す
放棄によって次の順位の親族が相続人になる場合があります。放棄の受理通知が届いたら、誰が次の相続人かを確認し、必要に応じて連絡します。
引渡しの際は、鍵だけでなく、実家を維持するための情報も渡すと後の混乱を減らせます。
| 引き渡す情報 | 記録しておく内容 |
|---|---|
| 鍵・保管物 | 種類、個数、受け取った人 |
| 建物の状態 | 損傷箇所、撮影日、急ぐ問題 |
| 関係する連絡先 | 管理業者、自治体、近隣の連絡窓口 |
| 書類 | 点検報告、修繕の資料、受理通知の控え等 |
引渡しの日、相手、物と書類の内容を記録します。相手が受取を拒んだ場合などは、鍵を郵便受けへ入れるだけで義務が終わると判断せず、次の対応を弁護士に相談してください。
相続人がいなくなった場合は、清算人の選任を相談する
相続人全員が放棄した場合などは、家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てる方法があります。清算人は財産や債務を調べ、清算を進める人です。全員が放棄した時点で、自治体が自動的に実家を引き取る制度ではありません。裁判所・相続財産清算人の選任
申立先は亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所です。申立てできる立場か、どの戸籍や財産資料が必要かは、事情を示して確認します。
裁判所は、財産から管理費用や報酬をまかなえない可能性がある場合、申立人に予納金を求めることがあります。申立手数料だけで済むと考えず、費用の見通しを聞いてください。
法律相談には、放棄と実家管理の経過を持っていく
用意したいのは、死亡日、自分が相続人と知った日、相続放棄の申述日と受理の資料、実家の登記や固定資産税の資料、管理してきた経過です。
相談事項は「自分に保存義務が残るか」「当面どの対応が必要か」「誰へどう引き渡すか」「費用をどう扱うか」の4点にすると具体的になります。裁判所では申立ての方法を、個別の権利義務は弁護士などへ尋ねます。
放棄そのものの手続きがまだ終わっていない人は、財産の売却や大規模な処分へ先に進まず、放棄への影響も含めて相談しましょう。
参照資料(2026年10月13日確認):法務省・保存義務の説明、裁判所・相続財産清算人。
