情報確認日:2026年10月15日
親の借金額が分からず、財産が残る可能性もあるときは、相続で得た財産の限度で債務などを弁済する「限定承認」を検討できます。ただし、相続人が複数なら全員共同で、原則として自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。受理後も公告・債務の弁済・財産の換価が必要です。財産を残したいという希望だけで、特定の借金や実家だけを選んで相続する制度ではありません。
放棄との違いは、残る財産を受け継げること
裁判所の案内は、単純承認、相続放棄、限定承認を区別しています。単純承認は権利と義務を受け継ぎ、相続放棄は相続人でなかったものとして扱われます。
限定承認は、相続によって得た財産を限度として、親の債務や遺贈を弁済することを留保した承認です。清算後に財産が残れば、相続人が受け継ぐことになります。借金を含めた調査と清算を省ける手続きではありません。
たとえば財産の価値や借金の全体像が確定していない段階で検討する余地がありますが、金額の大小だけで最適な選択を決めることはできません。担保、保証債務、税金、清算に必要な費用も含め、弁護士や税理士などに確認します。
相続人の一部だけでは申述できない
共同相続人がいる場合、限定承認は全員が共同して行います。兄弟の一人だけが「自分の分は限定承認にする」という申述はできません。
すでに相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされるため、それ以外の共同相続人全員で行います。裁判所のQ&Aにも、この扱いがあります。「放棄する予定」という口頭の話だけで、その人を申述から外さないでください。
まず戸籍で相続人を確認し、各人がどの選択をするか、期限がいつかを整理します。未成年の相続人や後見を受けている人がいる場合は、代理や利益相反の問題もあるため、早めに家裁へ手続きを確認してください。
3か月の間に、財産を処分しないで相談する
期限の起点は、単に葬儀の日ではなく、「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。判断に必要な資料が得られない場合は、家庭裁判所への期間伸長の申立てを検討します。家族が調査中だからといって、自動で延びる期限ではありません。
現行民法の915条・921条では、期間や法定単純承認を定めています。相続財産の全部・一部を処分すると、保存行為などの例外を除き、単純承認をしたものとみなされる場合があります。
親の口座を解約して分配する、実家を売るなどの行動を始める前に相談してください。申述後も、財産を隠す、私的に消費する、悪意で目録から除くといった行為には法定単純承認の規定があります。「家裁で受理されたから、以後の扱いは自由」とは考えないことが大切です。
家庭裁判所へ提出する書類と費用
申述先は、親の最後の住所地の家庭裁判所です。子の現在の住所を基準に決める手続きではありません。
基本となるのは、申述書、相続財産目録、親の出生から死亡までの戸籍、住民票除票または戸籍附票、申述人全員の戸籍などです。相続人の順位や、亡くなっている子・兄弟などの有無で追加の戸籍が変わります。
目録のために、預貯金、不動産などの資産と、借入れ・請求などの債務を、資料とともに整理します。目録の記載方法は申述先の書式を使って確認してください。入手が間に合わない戸籍は申述後の追加提出ができる場合があるため、書類待ちで期限を過ぎる前に家裁へ連絡します。
裁判所の全国案内では、申述の収入印紙は800円分で、連絡用の郵便料が別に必要です。郵便料は裁判所ごとに確認します。戸籍取得、官報公告、専門家への依頼などの費用は、この800円に含まれません。
受理後の公告には、別の短い期限がある
| 清算を行う人 | 最初の官報公告の期限 |
|---|---|
| 単独の限定承認者 | 限定承認をした後5日以内 |
| 共同相続で選任された相続財産の清算人 | 選任があった後10日以内 |
共同相続の場合、家裁は相続人の中から「相続財産の清算人」を選任します。清算人が相続人に代わり、管理や債務の弁済を進めます。現在の法律上の名称は「清算人」です。
公告で債権者などに請求の申出を求める期間は、2か月以上必要です。知っている債権者などには個別の催告も行います。公告期限の5日・10日と、債権の申出期間の2か月を混同しないでください。
その後の弁済には、債権額の割合や優先権などの規則があります。必要な財産の売却は原則として競売で、家裁が選任した鑑定人の評価額を弁済して競売を止める規定もあります。実家を当然に手元へ残せると決めず、清算方法と資金を確認します。
相続税だけでなく、所得税も確認する
国税庁の案内では、限定承認による相続などは、時価で資産を譲渡したものとして扱われます。土地などの含み益がある場合は、親の譲渡所得と準確定申告の検討が必要です。
死亡した人の譲渡所得の申告は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内という期限があります。限定承認の3か月とは別に管理してください。申述の前から、親の取得時の資料、財産評価、税額と清算への影響を税務署や税理士に確認すると、選択を具体的に判断できます。
参照資料
あわせて読みたい記事
執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT
