実家じまい・空き家

家族の住んでいた日本の家と荷造りした箱を前に鍵と書類を持つ家族の様子

実家じまいは、思い出の品を一気に捨てることでも、すぐに解体・売却することでもありません。誰が決められるのかを確認し、安全を確保し、残す物と手放す物を分け、家の状態と費用を比べて、使う・貸す・売る・解体する順に決めます。

家族の住んでいた日本の家と荷造りした箱を前に鍵と書類を持つ家族の様子

最初に「誰が決められるか」を確認する

親が存命なら、家財や不動産について本人が何を希望しているかを先に聞きます。本人の同意なく、家族だけで処分や売却を進めると、後で大きな行き違いになることがあります。
親が亡くなった後は、次の情報をそろえます。
・土地・建物の登記名義人、共有者、抵当権の有無
・固定資産税の納税通知書、権利証・登記識別情報、売買契約書、図面
・相続人、遺言書の有無、遺産分割協議の進み具合
・住宅ローン、賃貸借契約、管理費、未払いの光熱費や税金
相続人が確定していない、共有者の意見がそろっていない、名義が親のままになっている場合は、売却や大きな処分を急がず、法務局、司法書士、弁護士などに相談します。預金通帳、印鑑、契約書、遺言書などを家財と一緒に処分しないことも重要です。

最初の訪問で確認すること

空き家になった直後は、片付けより先に安全と被害の拡大防止を確認します。家に入るときは、床の抜け、漏電、ガス、害虫、カビ、倒れかけた家具などに注意し、一人で無理をしません。
・雨漏り、水漏れ、破損した窓や屋根、外壁の状態を写真で残す
・玄関、窓、倉庫、車庫の施錠と合鍵の保管者を確認する
・郵便物、新聞、宅配物がたまらない方法を決める
・電気、ガス、水道を止めるかどうかを、設備の凍結・漏水・防犯も含めて確認する
・火災保険に空き家になったことを伝え、契約上の補償条件を確認する
・近隣に緊急連絡先を伝え、漏水や倒木などの連絡を受けられるようにする
確認日、写真、気づいた不具合、依頼先、費用を記録します。修理が必要な場合は、応急対応と本格修繕を分けて見積もりを取ります。

家財は4つに分けてから処分する

家財整理の前に、家族で「残す」「譲る・売る」「寄付・リユース」「廃棄」の基準を決めます。
1.法律・お金に関するもの:権利証・登記識別情報、通帳、印鑑、保険証券、年金や税金の書類、契約書、遺言書、デジタル機器
2.思い出・貴重品:写真、手紙、アルバム、宝飾品、記念品
3.本人が使う・家族が引き取るもの:家具、衣類、家電、日用品
4.処分するもの:壊れた物、期限切れの物、引き取り手のない物
残す物は置き場所と保管者を決め、写真や一覧表で記録します。薬、個人情報が入った書類、パソコンやスマートフォンは、通常の粗大ごみに混ぜず、医療機関・薬局・自治体・専門業者などに処分方法を確認します。家族の気持ちが分かれる物は、期限を決めて保留箱に入れ、後日もう一度話し合います。

不用品の処分は自治体のルールから始める

家庭から出るごみは、市区町村の分別、粗大ごみ、持ち込み、収集日、家電リサイクルの案内を確認します。市区町村の許可や委託を受けていない業者が、家庭の廃棄物を回収することは認められていません。
業者に依頼する場合は、次を確認してから契約します。
・一般廃棄物処理業の許可または市区町村の委託の有無
・作業する部屋、品目、数量、搬出方法、運搬・処分方法
・見積もりに含まれる人件費、車両費、処分費、清掃費、階段・養生費
・追加料金が発生する条件、キャンセル料、支払時期
・残す物や個人情報の取り扱い、作業後の写真や処分記録
「定額パック」「積み放題」「無料回収」と書かれていても、現地で追加料金を請求されることがあります。複数社の見積もりを取り、作業内容と料金を紙で確認します。買取と廃棄は別の契約になる場合があるため、何をいくらで買い取るのか、処分する物はいくらかを分けて記録します。

空き家を管理する項目

売る、貸す、解体するまでの間も、建物と周囲の状態を確認します。自分で通えない場合は、家族、近隣の協力者、空き家管理業者、修繕業者などの候補を比べます。
・戸締まり、郵便物、電気メーター、水道メーター
・換気、雨漏り、水漏れ、カビ、害虫、給排水設備
・屋根、外壁、塀、樹木、雑草、側溝、落雪や台風の危険
・不法侵入、投棄、近隣からの苦情
・点検日、写真、異常の有無、対応した業者、費用
点検の頻度や作業内容は、地域の気候、建物の状態、保険契約、管理契約によって変わります。鍵を預ける場合は、誰がどの場面で使えるのかを決め、記録を残します。

管理不全空家になる前に自治体へ相談する

令和5年12月13日に改正空家法が施行され、放置すれば特定空家になるおそれがある「管理不全空家等」も、市区町村が指導・勧告を行う対象になりました。勧告を受けた管理不全空家等の敷地は、固定資産税の住宅用地特例が解除される場合があります。
外壁や屋根の破損、樹木の繁茂、害虫、倒壊の危険、周辺への影響などが気になる場合は、市区町村の空き家担当窓口に早めに相談します。自治体によって、空き家バンク、管理・修繕の相談、解体補助、専門家相談などの制度が異なります。

「使う・貸す・売る・解体する」を比べる

選択肢ごとに、費用だけでなく、手続きと時間も書き出します。
・家族が使う:修繕、光熱費、固定資産税、火災保険、通う負担
・貸す:修繕、設備更新、賃貸の条件、入居後の管理、空室期間
・そのまま売る:売却価格、仲介手数料、残置物、測量、境界、契約条件
・修繕して売る:修繕費をかけた場合の売却可能性と回収見込み
・解体して土地を売る:解体費、廃棄物処理、アスベスト等の確認、滅失登記、解体後の税や管理
解体すれば必ず有利になるとは限りません。建築基準法上の接道、用途地域、再建築の可否、上下水道、境界、災害リスクなどを自治体や専門家に確認してから決めます。

売却前に集める資料と査定の見方

不動産会社へ相談する前に、次の資料をできる範囲でそろえます。
・登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、建築確認・図面、測量図
・土地と建物の面積、築年、増改築の履歴、雨漏りや修繕の記録
・接道、上下水道、ガス、境界、越境、私道負担、抵当権
・相続登記の状況、遺産分割協議書、遺言書、共有者の確認
査定額は売却を約束する金額ではありません。複数の不動産会社に、媒介契約、仲介手数料、測量や残置物処分の費用、契約不適合責任、売却までの期間、売れない場合の次の選択肢を質問します。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で周辺の取引価格や地価公示などを確認することもできますが、個別の家の価格を決めるものではありません。

相続した空き家の税金と登記

相続または遺贈で取得した被相続人の居住用家屋や敷地を、一定の要件を満たして令和9年12月31日までに売却すると、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。建物の建築時期、相続開始時期、売却期限、耐震や取壊しの条件など、適用要件があります。利用できるかは、売却前に税務署または税理士へ確認します。
相続登記は令和6年4月1日から義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。令和6年4月1日より前に相続した不動産で相続登記が済んでいない場合も対象となり、原則として令和9年3月31日までに申請が必要です。相続人や共有者の話し合いがまとまらない場合は、法務局や司法書士に早めに相談します。

家族で決めるための1枚

・所有者、相続人、共有者、遺言書の有無
・家に残す物、譲る物、売る物、処分する物
・雨漏り、倒壊、侵入など、先に対応する危険
・いつまでに、何を決めるか
・管理、修繕、家財整理、測量、解体、登記、税金の概算
・家族それぞれの希望と、合意できていない点
・相談する自治体窓口、法務局、司法書士、税理士、不動産会社
「処分する人」「支払う人」「最終決定者」を曖昧にしないことが、後のトラブルを減らします。迷う物や権利関係が未確認の物は、先に捨てずに保留します。

契約トラブルに注意する

「今日中に契約すれば安い」「全部無料」「家財も土地もまとめて高く買う」など、急がせる勧誘には注意します。見積もり、作業範囲、廃棄方法、買い取り品、追加料金、キャンセル条件を確認し、納得できないまま契約しません。困ったときは、市区町村の相談窓口や消費者ホットライン188に相談します。

くわしく知る

このページの内容に関係する、個別の手続きを詳しく解説した記事です。

参考にした公的情報

国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
国土交通省「空き家対策 特設サイト」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024020104.html
法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」
https://www.env.go.jp/recycle/kaden/tv-recycle/qa.html
国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル」
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221102_1.html
国土交通省「不動産情報ライブラリ」
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/help/contents/

※この記事は、親の介護や相続に伴う実家の整理・管理を考えるための一般的な情報整理を目的とした記事です。自治体の制度、建物の状態、相続人の関係、契約、税金、不動産の売却可否は個別に異なります。処分・売却・解体・登記・税務の判断をする前に、市区町村、法務局、司法書士、弁護士、税理士、不動産会社などへ確認してください。

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