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家族信託と成年後見、どちらが必要?できること・費用・併用を比較

家族信託と成年後見、どちらが必要?できること・費用・併用を比較 成年後見・財産管理

家族信託は、契約で定めた財産を管理・処分するための仕組みです。成年後見は、判断能力が不十分な本人について、財産管理に加え、介護や住まいに関する契約などを法律面から支えます。

選び方は、親のどの財産・契約を支える必要があるかで変わります。不動産だけを管理したいのか、介護契約や信託していない財産にも支援が必要なのかを整理してください。家族信託を使っても、後見が必要な場合や、後見より費用がかかる場合があります。第二東京弁護士会「民事信託の基本」

2026年10月1日に確認した現行制度を説明しています。成立済みの成年後見制度改正と施行の区別は、2026年の制度改正を参照してください。

図解:家族信託の外に残る支援を確認

家族信託の外に残る支援を確認。財産管理と本人の契約支援を分ける
財産と生活の支援を、それぞれ確認する。 図解は当サイト作成。出典:信託協会:受託者の義務等、本文の資料。2026年10月1日確認。

図解を大きく見る

図解の内容を文章で読む
  1. 信託する財産:対象と使い道を契約で決める
  2. 本人の契約:介護等の代理は別に確認する
  3. 管理と報告:分別管理や記録を続ける
  4. 引継ぎの備え:管理を続けられない場合に備える

財産と生活の支援を、それぞれ確認する。

家族信託で任せるのは、契約で特定した財産

親が財産を託す「委託者」、管理を引き受ける子等が「受託者」、財産から利益を受ける人が「受益者」です。例えば父が自分を受益者として、自宅と一定の金銭を長男に託し、父の生活費や介護費のために使う設計が考えられます。

信託の対象財産、売却を認める範囲、売却代金の管理方法は、契約で定めます。親の財産すべてが自動的に対象になる仕組みではありません。金融機関にも、契約内容や財産の種類に応じた取扱いを事前に確かめてください。

比べる点 家族信託 成年後見
主な役割 信託財産の管理・処分 財産管理と生活に関する法律上の支援
対象財産 信託した財産 類型・付与された権限等による
支援する人 契約で定める受託者 法定後見は裁判所が選任。任意後見は本人が契約
介護施設等の契約 信託だけで本人の代理権は得られない 権限の範囲で本人を代理・支援
運用の確認 受益者等への報告・契約設計が要る 裁判所や監督人による監督

後見による支援の範囲は、後見・保佐・補助や個々の審判で異なります。厚生労働省「成年後見制度の種類」

財産から介護費を払うことと、介護契約の代理は違う

信託した金銭を父の介護費に使うことと、父に代わって施設入所契約を結ぶことは別です。受託者になっただけでは、父個人のあらゆる契約を代理できません。

例えば、自宅の管理を家族信託で備えていても、父の判断能力が低下し、信託外の預金や介護契約で困れば、別の支援が必要になる場合があります。まず、信託の外に残る仕事を一覧にしましょう。そのうえで、契約内容と本人の状態に応じて、任意後見等との併用を検討してください。

成年後見の「身上保護」は、サービスの契約や支払い等を通じて、本人の暮らしを支える役割です。食事や入浴などの介護を、後見人が直接行うという意味ではありません。

受託者には、親のお金を自分のお金と分ける責任がある

信託協会は、受託者の基本的な義務として、注意を尽くして管理すること、受益者のために忠実に仕事をすること、信託財産と自分の財産を分けて管理することを挙げています。帳簿や報告書の作成・保存等も求められます。信託協会「受託者の義務」

家族が受託者になった場合も、支出の記録と受益者等への必要な報告を続けます。兄弟姉妹と何を共有するかは、本人の希望や契約上の権利を踏まえて別に決めてください。長男が忙しくなったり亡くなったりしたときの引継ぎ先も、契約時に検討しておきましょう。

費用は同じ期間・同じ仕事で比べる

家族信託には契約設計や専門家への報酬、公正証書を作る場合の費用、不動産登記等の費用が考えられます。運用中の税務、帳簿管理、契約変更、専門家への継続相談にも費用が生じる場合があります。

成年後見の費用は、申立ての費用と、後見人等や監督人の報酬などに分けて確認してください。任意後見では、任意後見人への報酬と、裁判所が決める監督人の報酬を分けて考えます。裁判所「任意後見制度の概要」

費用を比べるときは、同じ期間に同じ仕事を任せる条件をそろえてください。一方の契約作成費だけと、もう一方の10年間の報酬は、そのまま比べられません。見積もりを「初期」「毎年」「変更・終了時」に分け、誰がどこまで対応する金額なのかを確かめましょう。家族信託によって税金が当然に軽くなるわけでもありません。

契約を急ぐ前に、本人の理解と希望を確認する

家族信託の契約には、親本人が内容を理解して意思を示せることが必要です。認知症という診断名だけで判断せず、具体的な契約内容を理解できるかを確認してください。家族全員の賛成で、本人の判断能力を補って契約することはできません。

相談前には、次を紙1枚にまとめると役割の抜けを見つけやすくなります。

  • 親が希望する暮らしと、使ってよいお金の目的
  • 信託を考える不動産・金銭と、対象外にする財産
  • 受託者候補、記帳できる人、引継ぎ先
  • 介護契約や年金等、信託だけでは処理できない仕事
  • 金融機関、登記、税務、専門家報酬の確認事項

相談する相手は、信託の設計が弁護士・司法書士等、税務が税理士、口座の取扱いが金融機関です。

例:賃貸物件を信託しても、母個人の手続は残る

以下は架空の例です。母は賃貸アパートを持ち、将来に備えて長男へ管理を託したいと考えています。家賃収入は母の生活費に使う予定ですが、母個人の預金口座、年金、介護サービスの契約もあります。

相談では、アパートや信託する金銭と、母の名義で残る財産を分けて整理してください。そのうえで、信託財産から生活費を出す仕事、母個人の手続を支える仕事、通院や日常の見守りを担当する仕事について、誰が担うかを考えましょう。

この例で検討したいのは、母個人の契約を支える人と、受託者として財産を管理する人の役割です。担当する人がいない仕事が残らないかを確かめてください。信託だけで身上保護のすべてに対応できるわけではありません。第二東京弁護士会も、他の制度との組合せを含め、長期的に適した支援を選ぶよう説明しています。第二東京弁護士会「民事信託の基本」

受託者が記帳・報告を続けられるか確認する

契約前に、受託者が毎月続ける作業を書き出してみましょう。長男が誠実でも、忙しくて領収書の整理や収支報告を続けられない場合があります。

継続する仕事 契約前に決めたいこと
収入・支出の記録 記帳する人、証拠書類の保管先
残高や修繕費の管理 生活費を確保しながら支払う手順
報告・確認 誰へ何を報告し、疑問をどう解消するか
担当者の交代 長男が続けられない場合の引継ぎ方法

受託者には、帳簿等の作成・保存や報告の義務があります。受益者には、信託事務の状況について報告を求める権利等があります。家族間の信託でも記録を残し、本人が確かめられる運用にしてください。信託協会「受託者の義務」、同「受益者の権利」

家族間の情報共有は、契約上の権利と分けて決めてください。母の希望や個人情報にも配慮し、兄弟姉妹の誰に何を伝えるかを相談しましょう。

見積もりでは「開始後に残る仕事」の費用も聞く

見積書に契約作成費と登記費だけが載っているなら、契約後の質問や定期的な点検も含まれるかを聞いてください。受託者が自分で記録を作るのか、専門家が支援するのかによっても、負担が変わります。

相談の場で、次の質問をすると契約案と運用のずれを見つけやすくなります。

  • 信託しない財産と本人の契約は、将来誰が扱いますか。
  • 金融機関には、今回の契約案で利用できるか確認しましたか。
  • 専門家への継続相談、税務の確認、変更・終了時の支援は別料金ですか。
  • 受託者の仕事を確認する人と、交代を検討する場合の手続は決まっていますか。

相談の範囲は、契約書の作成に加えて、口座の準備や契約後の管理まで確かめてください。母の生活費を実際に払える準備が整うかを確認しましょう。

家族信託なら、後見制度の費用が全部なくなりますか?

信託外の財産や本人の契約支援について後見等が必要なら、両方の費用が生じる場合があります。逆に、現在の支援だけで足りるなら、広い信託契約が必要かを再検討できます。「どちらを契約するか」より先に、任せたい仕事の一覧を作ると、不要な契約と抜ける支援の両方を点検できます。

よくある疑問

判断能力が低下してから契約すればよいですか?

親本人が契約内容を理解できるかによります。既に理解が難しい場合は、後見等を含めた支援方法を相談してください。家族が代わりに署名するだけで契約できるものではありません。

家族信託は成年後見より優れていますか?

それぞれの役割に応じて選ぶ制度です。財産管理の柔軟さに加えて、生活上の契約、対象外の財産、受託者の事務負担まで比べてください。

任意後見との併用はどう考えますか?

信託財産を管理する人と、本人の契約を支える人の担当を整理してください。任意後見と法定後見の比較を読み、同じ仕事の二重化や、どちらも扱わない仕事がないか確認しましょう。

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