親に頼める身元保証人がいなくても、入院や施設入所をあきらめる必要はありません。国は、身元保証人等がいないことだけを理由に医療機関が入院を拒むことは認められないとの通知を出しています。まず、病院・施設が保証人に何を求めているか(緊急連絡、費用の支払い、退院・退所時の引取り、亡くなった後の対応など)を分けて聞き、それぞれを家族、ケアマネジャー、成年後見人、民間の終身サポート事業者などで代わりに担う方法を相談します。
情報確認日:2026年10月8日。保証人に求める役割は病院・施設ごとに違います。民間事業者と契約する場合は、2024年6月に国が公表した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」も参考にしてください。
手続きの前に用意するもの
- 病院・施設から渡された入院・入所の申込書、保証人の欄の説明
- 親の収入・預貯金の状況(費用を本人の財産から払えるか確認するため)
- 連絡が取れる親族の一覧(遠方でも、連絡先だけ引き受けてくれる人がいるか)
- ケアマネジャー、地域包括支援センター、病院の医療ソーシャルワーカーの連絡先
1. 保証人に求められている役割を分けて聞く
「身元保証人」という言葉には、いくつもの役割がまとめて含まれています。病院や施設が本当に心配しているのはどの部分かを確認すると、代わりの方法が見つけやすくなります。
| 役割 | 代わりになりうる方法の例 |
|---|---|
| 緊急時の連絡先 | 遠方の親族、友人、ケアマネジャーとの連絡体制 |
| 入院費・利用料の支払い | 本人の口座からの引落とし、預り金(デポジット)、保証会社、成年後見人による支払い |
| 治療方針などの意思決定の支援 | 本人の意思の確認と記録、医療・ケアチームでの話し合い |
| 退院・退所時の引取り、転院先の調整 | 医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、地域包括支援センター |
| 亡くなった後の遺体・遺品の引取り、精算 | 親族、死後事務委任契約、成年後見人(一定の範囲で) |
「母の入所にあたり、身元保証人を立てるのが難しい状況です。保証人に求めているのは、費用の支払い、緊急連絡、退所時の引取り、亡くなった場合の対応のどれでしょうか。それぞれ別の方法で対応できるか相談させてください」
ここまでの完了目安:病院・施設が求めている役割が具体的に分かった。
2. 家族・親族で引き受けられる役割を整理する
遠方に住んでいる、高齢である、などの理由で「保証人は無理」でも、緊急連絡先なら引き受けられる親族は多くいます。金銭の保証はしないが連絡は受ける、という形で一部を引き受けてもらえるか相談しましょう。
連帯保証を引き受ける場合は、契約書で保証の上限額(極度額)が定められているかを確認します。個人が根保証をする契約では、極度額の定めがないと保証契約は無効になります。
ここまでの完了目安:家族・親族が引き受けられる役割と、引き受けられない役割が分かった。
3. 相談窓口と一緒に、役割ごとの代わりの方法を探す
入院中なら病院の医療ソーシャルワーカー(相談室)、在宅ならケアマネジャーや地域包括支援センターが相談先です。地域によっては、社会福祉協議会などが身寄りのない人の入院・入所を支える取り組みをしています。
- 判断能力が低下している:成年後見制度で後見人等が費用の支払いや契約を担う(身元保証人そのものにはならない)
- 判断能力はあるが金銭管理に不安:社会福祉協議会の日常生活自立支援事業
- 判断能力があり、元気なうちに準備したい:任意後見契約、死後事務委任契約、民間の終身サポート事業
ここまでの完了目安:役割ごとに、使える制度やサービスの候補が決まった。
4. 病院・施設に代わりの方法を提案して交渉する
厚生労働省は、身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関が入院を拒むことは、医師法に抵触するとの通知(2018年4月)を出しています。また、身寄りがない人の入院や意思決定の支援についてのガイドラインも示しています。
交渉では、保証人がいないことを責めるのではなく、手順1で分けた役割ごとに「誰が・どう対応するか」を書面にして渡します。病院・施設側も具体的な対応が見えれば、受け入れを判断しやすくなります。
ここまでの完了目安:役割ごとの代わりの方法を伝え、受け入れの可否と条件の回答を得た。
5. 民間の終身サポート事業者を使う場合は契約内容を確認する
身元保証、日常生活の支援、亡くなった後の事務をまとめて引き受ける民間事業者があります。長期の契約になり、費用を前払い(預託金)することも多いため、国は2024年6月に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を公表し、事業者が守るべき事項を示しました。契約前に、少なくとも次の点を確認しましょう。
- 提供するサービスの範囲と、それぞれの費用(総額と内訳)
- 預託金の金額、管理方法(事業者の財産と分けて管理されているか)、返還の条件
- 解約の方法と、解約時・事業者が破綻した場合の返金
- 判断能力が低下した場合の対応、寄付や遺贈を求める条項の有無
契約は親本人が内容を理解して結ぶものです。家族やケアマネジャーが同席し、重要事項説明書の交付を受けてから判断します。
ここまでの完了目安:契約書と重要事項説明書で、費用・預託金・解約条件を確認した。
6. 亡くなった後の手続きの担い手を決めておく
病院・施設が最も困るのは、本人が亡くなった後の遺体の引取りや、居室の片付け、費用の精算です。親族が担うのか、死後事務委任契約を結ぶのかを、元気なうちに決めておきます。
財産の分け方は遺言で、葬儀・納骨・各種の解約は死後事務委任契約で、と役割を分けて準備すると、後の手続きがスムーズです。決めた内容は、病院・施設とケアマネジャーにも伝えておきましょう。
ここまでの完了目安:亡くなった後の手続きの担い手が決まり、関係者に共有された。
入院・入所の前に準備しておくと話が早いもの
- 本人の希望を書いたメモ(延命治療、どこで暮らしたいか、連絡してほしい人)
- 緊急連絡先の一覧(親族、ケアマネジャー、かかりつけ医)
- 費用を支払う口座と、引落としの手続きに必要な通帳・届出印
- 介護保険証、医療保険の資格確認書類、お薬手帳
- 成年後見人や任意後見人がいる場合は、登記事項証明書
本人の意思が書面で分かると、身元保証人がいなくても、医療・ケアのチームが本人の意向に沿って判断しやすくなります。
連帯保証を引き受けるときの確認点
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 極度額(保証の上限額)の記載 | 個人が継続的な債務を保証する契約では、極度額の定めがないと無効 |
| 保証の対象となる費用の範囲 | 利用料のほか、損害賠償や原状回復費まで含むか |
| 本人の支払いが遅れたときの連絡 | 滞納が膨らむ前に知らされるか |
| 保証の期間と終了の条件 | 退所・死亡後にどの範囲まで責任が残るか |
よくある質問
成年後見人がいれば身元保証人になってもらえますか?
成年後見人は、本人の財産から費用を支払ったり契約を結んだりしますが、身元保証人(連帯保証人)にはなりません。医療行為への同意も、後見人の権限には含まれないとされています。
子が一人いますが、関わりたくないと言っています。
役割を分けて、緊急連絡だけ、亡くなった後の連絡だけなど、引き受けられる範囲を相談してみてください。それも難しい場合は、地域包括支援センターに状況を伝え、公的な支援と民間サービスを組み合わせて検討します。
施設から入居時にまとまったお金を預けるよう言われました。
保証人の代わりに預り金(デポジット)を求める施設があります。金額、何に充てるのか、退所や死亡のときにいつ・誰に返還されるのかを書面で確認してから預けましょう。
あわせて確認したい手続き
出典・確認先
- 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(2024年6月)
- 厚生労働省|身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
- 厚生労働省|上記ガイドラインの周知依頼(2019年6月)
- 総務省|身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査

