親の介護で仕事を続けられないと感じたとき、最初に決めるのは退職日ではありません。まず、いつ付き添いが必要か、家族以外に頼める支援は何か、勤務先でどの制度を使えるかを一枚のメモにします。
通院や手続きのために数時間・数日休むなら介護休暇、介護サービスや家族分担を整えるためにまとまった期間が必要なら介護休業が候補です。介護休業は、対象家族1人につき通算93日、3回まで分けて取得できます。雇用保険の要件を満たす場合は、介護休業給付の対象になることがあります。
制度の詳しい対象者、申出期限、給付の計算は「介護休業の取り方|93日・3回分割・申出期限・給付金」で確認してください。この記事では、退職届を書く前の行動順に絞って説明します。
まず確認したい3つの制度
| 制度 | 使う場面 | 確認すること |
|---|---|---|
| 介護休業 | 介護の体制を整えるため、まとまった期間休む | 対象家族1人につき通算93日、3回まで |
| 介護休暇 | 通院の付き添い、ケアマネジャーとの打合せなど、短時間・短日の対応 | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日まで。時間単位での取得も可能 |
| 介護休業給付 | 介護休業中の生活費を補う | 雇用保険の加入状況や休業前の被保険者期間などの要件 |
制度の名前は似ていますが、使う場面が違います。数日単位の用事に介護休業を使うのではなく、まとまった準備期間には介護休業、通院や手続きには介護休暇というように分けて考えると整理しやすくなります。
介護休業は「介護の体制をつくるため」の休み
介護休業は、要介護状態にある対象家族を介護するための休業です。対象家族は、父母、配偶者、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母などです。
対象家族1人につき、3回まで、通算93日を上限に取得できます。希望どおりの日から休むには、原則として休業開始予定日の2週間前までに、勤務先へ申し出ます。
ここで大切なのは、93日を「自分が介護を続けるための日数」と考えないことです。厚生労働省は、介護休業を、介護サービスの手配や家族の役割分担など、仕事と介護を両立する体制をつくるための期間と位置づけています。
たとえば、次のような準備に使います。
- 地域包括支援センターや市区町村へ相談する
- 要介護認定や介護サービスの利用を進める
- ケアマネジャーと在宅サービスや施設を相談する
- 兄弟姉妹など家族の役割分担を決める
- 勤務時間、在宅勤務、短時間勤務などを勤務先と相談する
介護休業中にすべての介護を一人で背負う制度ではありません。むしろ、介護を一人で抱えないための準備期間です。
介護休暇は、通院や手続きなどの「その日」の対応に使う
介護休暇は、対象家族の介護や世話をするための休暇です。通院の付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打合せなどにも利用できます。
対象家族が1人なら1年間に5日まで、2人以上なら10日まで取得できます。介護休暇は1日または時間単位で取得できます。ただし、業務の性質上、時間単位での取得が難しいと認められる労働者について、時間単位の取得を除外する労使協定がある場合は、1日単位での取得となります。
介護休暇は、労働基準法の年次有給休暇とは別の制度です。有給か無給かは勤務先の規定によって異なります。申出は書面に限られず、口頭でも可能ですが、勤務先に様式がある場合は社内ルールを確認してください。
なお、2025年4月1日から、労使協定で介護休暇の対象外にできる「継続雇用6か月未満」という要件は廃止されました。週の所定労働日数が2日以下の労働者を対象外とする労使協定は引き続き可能です。
介護休業給付は、休業前に受給要件を確認する
雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす場合は、介護休業給付の対象になることがあります。
給付額は、原則として「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で計算します。介護休業中に賃金が支払われた場合や、休業中の就労日数が多い場合は、減額または不支給になることがあります。
受給資格には、介護休業を開始した日前2年間に、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あることなどの要件があります。支給申請は、原則として事業主を経由して行いますが、本人が希望して申請することもできます。
給付を受けられるか、いくらになるかは、雇用保険の加入状況、休業前の賃金、休業中の就労や賃金によって変わります。退職や休業の開始を決める前に、勤務先の担当者またはハローワークへ確認してください。
2025年4月から、勤務先の対応も変わっています
2025年4月1日から、介護離職を防ぐため、事業主には次の対応が求められています。
- 介護休業や両立支援制度を利用しやすくするための雇用環境を整える
- 労働者が介護に直面したと申し出たとき、制度の内容や申出先を個別に知らせる
- 制度を利用するかどうかの意向を個別に確認する
- 介護に直面する前の早い段階で、制度について情報提供する
勤務先に制度がないと言われた場合でも、法律上の要件を満たす制度については、まず制度の対象や申出方法を確認してください。会社の担当者だけで解決しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談できます。
最初の7日間で確認する順番
1日目:緊急対応と「必要な付き添い」を分ける
救急受診、入院、転倒の危険など、今日対応しなければならないことを先に確認します。そのうえで、通院、食事、服薬、入浴、夜間の見守り、役所の手続きなど、家族が抱えている作業を書き出します。
「親が心配だから毎日行く」とまとめず、何曜日の何時に、誰の対応が必要なのかまで分けると、介護サービスや家族分担を考えやすくなります。
2〜3日目:地域包括支援センターへ相談する
親が住む地域の地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険窓口へ連絡します。要介護認定を申請していなくても、相談はできます。
伝えるのは、親の年齢、住所、病気やけが、入院の有無、現在できないこと、家族の困りごとです。要介護認定、ケアマネジャー、訪問介護、通所サービス、ショートステイなど、次に検討する支援を整理します。
2〜5日目:退職の前に勤務先へ状況を伝える
上司または人事・労務担当へ「家族の介護に直面した」と伝えます。2025年4月から、労働者が介護に直面したと申し出た場合、事業主には両立支援制度の個別周知と利用意向の確認が求められています。
介護休業だけでなく、介護休暇、残業免除、時間外労働・深夜業の制限、短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤など、勤務先で使える制度をまとめて確認します。
3〜7日目:休む期間に決めることを具体化する
介護休業を使う場合は、休業中に何を整えるのかを決めます。要介護認定を進める、サービスを契約する、きょうだいの分担を決める、緊急時の連絡順を作る、復職後の勤務時間を相談する、といった項目です。
93日間を家族だけで介護し続ける期間にしないことが大切です。仕事へ戻った後も回る体制をつくるために使います。
退職を考える前に、勤務先へ伝える順番
いきなり「辞めるか、続けるか」を決める必要はありません。次の順番で確認します。
1. 家族の状態と、必要な対応を書き出す
いつ、どの場面で付き添いが必要なのかを整理します。通院なのか、食事や入浴の介助なのか、夜間の見守りなのかで、必要な制度とサービスが変わります。
2. 勤務先の相談先を確認する
人事・労務担当、上司、社内相談窓口など、介護と仕事の両立を相談できる場所を確認します。相談時には、介護休業だけでなく、介護休暇、残業免除、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務なども一緒に尋ねます。
3. 地域包括支援センターへ相談する
勤務先の制度だけでは、介護の体制はつくれません。市区町村や地域包括支援センターに相談し、要介護認定や介護サービスの手続きを進めます。
4. 介護休業を「準備期間」として使うか判断する
休業中に何を決めるのかを、家族と勤務先の双方に伝えます。介護休業の開始日と終了日、利用するサービス、家族の分担、復職後の働き方を、できる範囲で具体化します。
相談前に用意しておくメモ
勤務先や相談窓口へ行く前に、次の項目をメモしておくと話が進みやすくなります。
- 介護が必要になった家族の氏名と続柄
- 現在困っていること、付き添いが必要な日や時間
- 要介護認定の申請状況
- 介護休業を始めたい時期と、準備したいこと
- 介護休暇を使いたい予定
- 勤務先の相談先と、確認した制度
- 介護サービスについて相談した地域包括支援センターやケアマネジャー
勤務先への相談文例
親の介護が必要になり、通院の付き添いと生活支援が発生しています。現時点で退職を決めているわけではなく、仕事を続けるために利用できる制度を確認したいです。介護休業、介護休暇、残業免除、短時間勤務などの対象条件と申出方法、社内の相談窓口を教えてください。親の状況と必要な対応を整理したメモも用意します。
口頭で相談した後は、相談日、担当者、説明を受けた制度、提出する書類、回答期限をメモに残します。
よくある疑問
要介護認定がなければ、介護休業は使えませんか?
介護休業の対象は、介護保険の要介護認定の区分だけで決まるものではありません。法律上の「要介護状態」に該当するか、対象家族の状態や勤務先の手続きなどを確認します。認定前でも、まず勤務先と地域包括支援センターへ相談してください。
パートやアルバイトでも対象になりますか?
雇用形態の呼び方だけで一律に決まるわけではありません。介護休業は、有期雇用の場合に契約更新の見込みなどの要件があります。労使協定による対象外の範囲もあるため、就業規則と勤務先の担当者へ確認します。
介護休業中は、介護に専念しなければなりませんか?
介護休業は、家族の介護を一人で続けるための制度ではありません。介護サービスの手配、家族の分担、復職後の働き方を整えるために使う制度です。
まとめ
親の介護が始まったとき、退職は最後に検討する選択肢です。
まず、介護休業で体制を整える期間をつくれるか、介護休暇で通院や手続きを調整できるか、勤務時間の制度を使えるかを確認します。雇用保険の要件を満たせば、介護休業給付を受けられる場合もあります。
介護の相談先は、勤務先だけではありません。地域包括支援センター、市区町村、ケアマネジャー、ハローワーク、都道府県労働局を順番に頼ってください。
退職届を書く前に、使える制度と相談先を一つずつ確認することが、介護と仕事を両立するための最初の一歩です。
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制度内容の確認日:2026年8月29日。勤務先の就業規則、雇用保険の加入状況、自治体独自の支援によって利用条件が変わるため、勤務先・ハローワーク・市区町村で個別に確認してください。
参考情報
※制度の対象や申出方法、給付の支給要件は、雇用形態、就業規則、労使協定、雇用保険の加入状況などで異なります。個別の判断は勤務先、ハローワーク、都道府県労働局などへ確認してください。


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