本文へ移動

認知症の親が相続人になったら|遺産分割と成年後見の利益相反を確認

認知症の親が相続人になったら|遺産分割と成年後見の利益相反を確認 成年後見・財産管理

遺産分割を進める前に、認知症の親が協議内容を理解して判断できるかを確認してください。例えば、父が亡くなって母と子どもが相続人になったものの、母が財産の分け方を理解できるか分からない場合です。子どもが母の名前を代筆して、家族だけで遺産分割を終えることはできません。

母に代理人が必要か、その代理人と母の利益が対立しないかも確認してください。認知症という診断名だけで、どの法律行為にも参加できないと決まるものではありません。

図解:相続では二つの立場を確認

相続では二つの立場を確認。取り分と、誰が代理できるかは別問題
共同相続人の後見人がいる例。権限を個別確認。 図解は当サイト作成。出典:裁判所:特別代理人等の選任等、本文の資料。2026年10月1日確認。

図解を大きく見る

図解の内容を文章で読む
  1. 親が相続人:親の権利・生活資金を守る
  2. 子も相続人:子自身の取得分にも関わる
  3. 子が親の後見人:二つの立場が重なる
  4. 利益相反の手続きを確認:特別代理人等・監督人を確認

共同相続人の後見人がいる例。権限を個別確認。

まず、遺言と相続人、協議できる状態を確認する

まず、遺言書の有無、相続人、財産と債務を整理してください。遺言や遺言執行者の指定がある場合は、どの財産に遺産分割が必要かも専門家に聞きましょう。必要な手続き自体を確認することから始めます。

協議が必要なら、体調や時間帯に配慮し、本人が理解しやすい言葉で説明して意思を確認してください。厚生労働省の意思決定支援の案内も、判断を支える環境と本人の希望の確認を重視しています。

説明しても協議の意味を理解し、判断することが難しい場合は、成年後見制度による支援などを相談してください。家族による署名の代筆だけで、法律上の代理権が生じるわけではありません。

後見人と本人が共同相続人なら、利益相反を確認する

たとえば長男が母の成年後見人で、亡くなった父の遺産を母と長男が分ける場合、長男は自分の取得分と母の取得分の両方に関わります。これが利益相反の代表例です。

裁判所の手続案内では、本人と後見人等が共同相続人として遺産分割をする場合などに、別の代理人が本人を代理するとしています。家族の合意や、母の取得分を多くする案があっても、利益相反の手続きが必要かを確認してください。

状況 主な確認
成年後見人と本人が共同相続人 特別代理人が必要か、監督人がいるか
保佐人・補助人と本人が共同相続人 遺産分割の代理権の有無と、臨時保佐人・臨時補助人の必要性
監督人が選任されている 監督人が本人を代理する取扱いを確認
専門職後見人が本人だけを代理する 本人の利益を守れる分割内容か。別の利益相反がないか

特別代理人の選任と、後見開始は別の手続き

特別代理人は、後見人と本人の利益が衝突する行為について、本人を代理するために選ばれます。親にまだ後見人等がいない場合は、後見開始を含めて必要な手続きを確認してください。特別代理人だけを付ければ協議を進められるとは限りません。

未成年者の遺産分割でも「特別代理人」という名称を使いますが、成年後見とは前提が異なります。対象となる本人と手続きに合う裁判所の書式を選んでください。

裁判所の案内では、遺産分割協議書案などの利益相反に関する資料と、候補者に関する資料が必要です。候補者は裁判所が判断するため、推薦した人が必ず選ばれるとは限りません。

本人の生活資金を確認して分割案を作る

分割案を作るときは、介護費、住まい、年金収入、今後の医療費など、本人の生活に必要な資金を確認してください。「母は施設にいるから現金は要らない」「実家は長男が使うから母には渡さない」という家族の都合だけで決めないようにしましょう。

本人に不利益な分割や、取得額を減らす案には、法律上の根拠と具体的な事情の検討が必要です。家族の相続対策のために本人の取得分を放棄するような案を、当然に認められるものとして作成しないでください。

相談例:母の後見人である長男も、父の相続人になった

次は利益相反を説明する架空例です。 父が亡くなり、母と子どもたちが相続人になりました。長男は母の成年後見人でもあります。「母の生活費を確保する分け方だから、長男が母の代理として署名してよい」と家族が考えたとしても、長男自身が共同相続人なら、誰が母を代理するかの確認を省けません。

この例では、長男が「自分の取得分を決める相続人」と「母の権利を守る後見人」という二つの立場を持っています。実際に意見が対立しているかだけでなく、この二つの立場を同じ人が担えるかを確認してください。裁判所の利益相反手続案内を踏まえ、特別代理人等が必要か、監督人がいる場合はどう扱うかを、担当裁判所へ聞きましょう。

法定相続分どおりなら確認を省ける?

まず、本人を誰が代理できるかを確認し、そのうえで分割案を検討してください。取り分の割合と、代理の体制は別の問題です。「公平に分けるつもり」「本人を損させないつもり」という説明だけで、利益相反の確認を省くことはできません。

協議書の案を作る前に、財産と本人の生活を並べる

遺産の一覧には、預金や不動産、確認できた債務、名義、評価の根拠を記入し、まだ分からない財産も書いてください。不動産は、固定資産評価額、査定額、実際の売却見込み額を分けて記録しましょう。それぞれ意味が異なる金額です。

本人が受け取る財産は、取得額に加えて、生活費に使える現金と、管理・維持の費用を確認してください。不動産を取得する案なら、税金・修繕・管理を誰がどう支えるかも相談します。本人の生活を守るための整理であり、家族の希望で取得分を減らすための計算とは分けて考えましょう。

準備するメモ 確認すること
相続関係図 本人、後見人、他の相続人が誰か。二つの立場を持つ人はいるか
権限の資料 後見登記事項証明書、保佐・補助で付与された代理権、監督人の有無
財産と債務の一覧 資料の出所、評価時点、未確認の財産や借金
本人の生活の見通し 年金収入、介護費、住まい、現金として必要な支出
分割案と未解決事項 誰が何を取得する案か、合意済みと未合意を区別

この表は相談準備用です。申立てに必要な正式書類は、裁判所の最新案内に合わせてください。

家族の話合いが止まったときに伝える質問

相談では、「母の代理人は誰になりますか」「利益相反の手続きと後見開始の手続きは、どちらが必要ですか」「今の権限で遺産分割を代理できますか」と分けて尋ねてください。取り分に争いがあるときは、その根拠を弁護士などへ示して検討しましょう。裁判所の相続・遺産分割案内には、協議がまとまらない場合の手続きも掲載されています。

相続人の確認、代理の体制、分け方、税・登記などの期限は、それぞれ別の確認事項です。一つが決まったことを理由に、他も解決したと思わないようにしましょう。

相続放棄や税・登記の期限は別に確認する

相続放棄、税・登記などの期限は、成年後見の申立てと別に確認してください。後見を申し立てても、すべての期限が自動で止まるわけではありません。本人の判断能力や法定代理人の状況によって、期限を数え始める日の確認が必要なものもあります。誰の、どの期限かを弁護士・司法書士・税理士へ伝えて相談しましょう。

相続放棄を検討している段階では、預金を使う、家を売る、家財を処分する前に相談してください。遺産分割、相続放棄、相続税申告、相続登記は別の手続きです。

相談前にそろえる確認表

  • 亡くなった人、死亡日、遺言書の有無。
  • 本人と後見人等を含む相続人の関係図。
  • 本人の現在の状態、希望、医師・支援者との相談内容。
  • 後見登記事項証明書や、付与された代理権が分かる資料。
  • 預金、不動産、債務の一覧と、分割案。
  • 本人の生活費・介護費と、今後必要な資金。
  • 迫っている期限と、すでに行った出金・処分。

確認表の資料を持って、成年後見と相続の両方を扱う法律相談へ進んでください。家庭裁判所では手続きの案内を確認できます。本人にとって適切な分け方は、専門家に個別に相談しましょう。

よくある質問

成年後見人がいれば、相続人全員の印鑑は要らなくなりますか

成年後見人は本人を代理しますが、ほかの相続人の参加や合意も必要です。本人を誰が代理するかと、協議の当事者全員の合意を、それぞれ確認してください。

監督人がいる場合も、必ず特別代理人を付けますか

監督人が後見人等に代わって本人を代理する場合は、特別代理人等の選任は不要と裁判所が案内しています。具体的な権限と手続きを、事件を担当する裁判所へ確認してください。

関連記事・出典

制度確認日:2026年10月1日。2026年成立の改正法と現在の手続きを混同しないよう、制度改正の記事も確認してください。

ほかの記事を探す
ホームで目的から探す →
タイトルとURLをコピーしました