親と同居したまま住民票の世帯を分ける「世帯分離」をすると、親だけの世帯が住民税非課税になり、介護保険料の段階や、施設の食費・居住費の軽減(負担限度額認定)、高額介護サービス費の上限が下がることがあります。ただし、住民票の世帯は「住まいと生計が一緒かどうか」の実態で決まるもので、費用を下げる目的だけで分けることはできません。配偶者は世帯を分けても判定に含まれる、国民健康保険料が上がることがある、などの注意点もあります。届け出る前に、窓口で影響を試算してもらいましょう。
情報確認日:2026年10月8日。保険料の段階や軽減の基準額は市区町村や年度で変わります。親の住所地の最新案内を確認してください。
手続きの前に用意するもの
- 親と同居家族それぞれの住民税の課税状況(課税・非課税)と所得の分かる書類
- 親の介護保険証、負担割合証、介護保険料の通知書
- 親の年金額が分かる書類(年金振込通知書など)
- 親と家族が加入している健康保険の種類(国保・会社の健保・後期高齢者医療)
- 家計の分け方の実態(食費・光熱費の負担、生活費の財布が別か)のメモ
1. 今の世帯の課税状況と、親が使っている制度を整理する
介護に関わる軽減制度の多くは、「本人と住民票上の同じ世帯の人が、住民税非課税かどうか」で判定します。子が働いていて住民税がかかっていると、親の年金が少なくても「課税世帯」として扱われます。
まず、親と同居家族それぞれの課税状況と、親が今使っている介護サービス(在宅か施設・ショートステイか)を書き出します。
ここまでの完了目安:世帯の課税状況と、親が使っている・使う予定のサービスが整理できた。
2. 世帯分離で変わる制度と変わらない制度を確認する
| 制度 | 世帯分離の影響 | 注意点 |
|---|---|---|
| 介護保険料(65歳以上) | 世帯全員が非課税になれば、段階が下がることがある | 本人の所得で決まる部分は変わらない |
| 負担限度額認定(施設・ショートステイの食費・居住費) | 世帯全員非課税なら対象になりうる | 配偶者は世帯を分けても判定に含まれる。預貯金の基準もある。グループホームや有料老人ホームは対象外 |
| 高額介護サービス費 | 世帯単位の上限が下がることがある | 同じ世帯の利用者の合算ができなくなる |
| 国民健康保険料 | 世帯ごとに計算されるため、上がることがある | 世帯ごとにかかる平等割などが2世帯分になる場合がある |
| 健康保険の扶養・税の扶養控除 | 住民票の世帯だけでは決まらない | 生計の実態や同居の有無で判断される |
ここまでの完了目安:自分の家で影響が出そうな制度と、損をする可能性がある制度が分かった。
3. 窓口で、分離した場合の負担を試算してもらう
市区町村の介護保険担当と国民健康保険担当に、今と分離後の負担を比べてもらいます。保険料、介護サービスの自己負担、施設の食費・居住費を年額で並べると判断しやすくなります。
「同居している母(要介護〇)について、私と世帯を分けた場合に、介護保険料の段階、負担限度額認定の対象かどうか、高額介護サービス費の上限、国民健康保険料がどう変わるか教えてください。母は年金のみで年〇万円、私は会社員で課税です」
ここまでの完了目安:分離した場合と今の場合の年間負担の比較ができた。
4. 生計が実際に別かを確かめ、届け出るか判断する
住民票の「世帯」は、住まいと生計を共にする集まりのことです。同じ家に住んでいても、食費や光熱費、生活費の財布が別で、それぞれ独立して暮らしているなら、別の世帯として届け出られます。一方、家計が一緒なのに費用を下げる目的だけで分けると、実態と違う届出になります。
負担限度額の申請で事実と違う申告をして軽減を受けた場合は、軽減額の返還に加え、加算金が課されることがあります。生活費の分け方を見直す場合は、分け方が分かる記録を残しておきましょう。
ここまでの完了目安:生計が実際に別であることを確認し、届け出るかどうかを家族で決めた。
5. 世帯変更届を出す
世帯を分ける届出(世帯変更届)は、住所地の市区町村の住民票の窓口で行います。届出は変更があった日から14日以内です。届出人の本人確認書類が必要で、代理人が出す場合は委任状を求められます。
世帯を分けると、親の住民票や証明書を子が取るときに委任状が必要になる場合があります。親の手続きを代わりに行うことが多いなら、その点も考えておきましょう。
ここまでの完了目安:世帯変更届が受理され、新しい世帯構成の住民票を確認した。
6. 軽減制度を申請し直し、毎年見直す
世帯を分けただけでは、軽減は自動的に始まりません。負担限度額認定は申請が必要で、認定期間は原則として毎年7月31日までのため、更新の申請も必要です。高額介護サービス費も、初回は申請が必要な自治体が多くあります。
住民税の課税状況は前年の所得で決まるため、効果が出る時期にずれがあります。毎年、通知書が届いたら段階や認定の結果を確認し、家計の状況が変わったら届出の内容も見直してください。
ここまでの完了目安:必要な軽減制度を申請し、次の更新時期を家族のカレンダーに入れた。
効果が出やすいケース・出にくいケース
| 効果が出やすい | 効果が出にくい・逆効果になりうる |
|---|---|
| 親の収入が年金だけで、親本人は住民税非課税 | 親本人が住民税課税(年金額が多いなど) |
| 同居の子が課税で、そのために「課税世帯」になっている | 親の配偶者(もう一方の親)が住民税課税 |
| 親がショートステイや施設を利用し、食費・居住費の負担が大きい | 親の預貯金が負担限度額認定の基準を超えている |
| 子が会社の健康保険に加入している | 親も子も国民健康保険で、世帯ごとの保険料が増える |
届け出る前に家族で決めておくこと
- 食費・光熱費・日用品など、生活費をどう分けるか(実態に合わせる)
- 親あての通知や郵便物を誰が確認するか
- 親の住民票や証明書を代わりに取る場面に備え、委任状の扱いをどうするか
- 勤務先の家族手当や社宅の条件に影響しないか
よくある質問
親が施設に入るとき、住民票を施設に移すと世帯分離になりますか?
施設に住所を移せば、親は別の世帯になります。その場合も、配偶者の課税状況は負担限度額の判定に含まれます。介護保険の保険者がどこになるか(住所地特例)も確認してください。
世帯主はどちらにすればいいですか?
分離後は、親の世帯の世帯主は親になるのが通常です。年金や保険料の通知の宛先も変わるため、郵便物の管理方法を決めておきましょう。
世帯分離すると、親の介護サービスの自己負担割合も下がりますか?
自己負担割合(1〜3割)は、親本人の所得と、同じ世帯の65歳以上の人の所得で決まります。子が65歳未満なら、世帯を分けても負担割合は変わらないのが通常です。
後で世帯を一つに戻すことはできますか?
できます。生計が再び一緒になったなど実態が変わったときは、変更から14日以内に世帯変更(世帯合併)の届出をします。届出後は、保険料や軽減制度の判定も新しい世帯構成で行われます。
あわせて確認したい手続き
出典・確認先
あわせて確認したい手続き(政経プラスの姉妹サイト)
- 医療費が高いときの支援一覧:高額療養費などの対象と申請先(給付金プラス)
- 負担限度額認定証は引越しで引き継げる?:転居時の食費・居住費の再申請(移住・引越し手続きナビ)

