親が特別養護老人ホームや介護老人保健施設へ入ると、介護サービスの自己負担とは別に、毎日の食費と部屋代がかかります。低所得の人は「介護保険負担限度額認定」を受けることで、この食費・居住費を所得段階に応じた上限まで軽減できる場合があります。
ただし、住民税が非課税というだけでは決まりません。別世帯の配偶者を含む課税状況、年金などの収入、預貯金等の資産を確認し、市区町村へ申請する必要があります。
この記事では、2026年8月1日からの基準をもとに、対象施設、所得・資産要件、必要書類、申請から施設への提示までを順番に整理します。
負担限度額認定は食費と部屋代を軽減する制度
介護保険施設の食費と居住費は、原則として利用者の全額負担です。しかし、所得と資産が一定以下の人には、食費・居住費の負担限度額が設定されます。施設が定める費用と負担限度額との差額は、介護保険から「特定入所者介護(予防)サービス費」として施設へ支払われます。
利用者は、市区町村から交付された介護保険負担限度額認定証を施設へ提示し、認定証に記載された上限額までを支払います。申請をしなければ自動的には適用されません。
高額介護サービス費とは対象が違います。高額介護サービス費は主に介護サービスの1~3割負担が月額上限を超えたときの制度で、食費・居住費は計算対象に含まれません。施設費用を確認するときは、二つを分けて考えてください。
対象になる施設とサービス
負担限度額認定の主な対象は、次の施設・サービスです。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 地域密着型介護老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
- 介護予防短期入所生活介護・介護予防短期入所療養介護
有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、通所介護の昼食代などは、原則としてこの認定の対象ではありません。同じ「施設」や「食事代」でも制度上の扱いが違うため、施設名ではなく介護保険上のサービス種別を確認します。
また、軽減されるのは対象施設の食費と居住・滞在費です。介護サービスの1~3割負担、理美容代、日用品代、医療費、特別な食事や特別室の追加料金まで同じ上限になるわけではありません。
認定には課税・収入・資産の三つの確認がある
生活保護受給者などを除き、認定の可否は主に三つの条件で判定されます。
- 本人が属する世帯の全員が市区町村民税非課税である
- 配偶者も市区町村民税非課税である
- 本人と配偶者の預貯金等が段階別の上限以下である
配偶者は、住民票上の世帯を分けている場合も確認対象です。婚姻届を出していない事実婚の相手が対象になることもあります。本人の世帯が非課税でも、別世帯の配偶者が課税されていれば、原則として通常の第1~第3段階には該当しません。
配偶者からの暴力、行方不明など特別な事情がある場合は通常と異なる扱いになることがあります。申請を諦めず、市区町村の介護保険担当窓口へ事情を伝えてください。
2026年8月からの所得段階と預貯金上限
2026年8月1日から、第2段階と第3段階①を分ける所得基準が80.9万円から82.65万円へ変更されました。判定には、老齢年金などの課税年金だけでなく、遺族年金・障害年金などの非課税年金と、その他の合計所得金額も含まれます。
| 段階 | 主な所得要件 | 預貯金等の上限 単身(配偶者あり) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者、または世帯・配偶者が非課税の老齢福祉年金受給者 | 1,000万円 (2,000万円)以下 |
| 第2段階 | 世帯・配偶者が非課税で、年金収入等+合計所得金額が82.65万円以下 | 650万円 (1,650万円)以下 |
| 第3段階① | 世帯・配偶者が非課税で、年金収入等+合計所得金額が82.65万円超120万円以下 | 550万円 (1,550万円)以下 |
| 第3段階② | 世帯・配偶者が非課税で、年金収入等+合計所得金額が120万円超 | 500万円 (1,500万円)以下 |
| 第4段階 | 世帯または配偶者に課税者がいる、本人が課税、資産要件を超えるなど | 通常の負担限度額なし |
65歳未満の第2号被保険者は、所得段階にかかわらず、預貯金等の上限が単身1,000万円、配偶者がいる場合は夫婦合計2,000万円とされます。
表は一般的な判定の目安です。税申告の状況、所得の計算、生活保護・境界層措置、配偶者の事情などで扱いが変わるため、最終的な認定は保険者である市区町村が行います。
預貯金等に含まれる資産を確認する
資産要件は、普段使う普通預金だけを見ればよいわけではありません。本人と配偶者が保有する次のような資産を合計します。
- 普通預金、定期預金、貯蓄預金
- ゆうちょ銀行の貯金
- 現金
- 株式、国債、地方債、社債などの有価証券
- 投資信託
- 金・銀など、時価評価額を確認できる貴金属
- その他、申請書で申告を求められる換金性の高い資産
借入金や住宅ローンなどの負債は、借用証書や残高証明などで確認できれば資産合計から差し引ける場合があります。住宅、自動車、生命保険、貴金属のうち時価評価が難しいものなどは一般的な預貯金等の範囲と異なりますが、自治体の申請書と案内を優先してください。
申請後、市区町村が銀行、年金保険者、官公署などへ照会することに同意する欄があります。口座を一つだけ提出する、配偶者の定期預金を省くといった申告漏れを避けます。虚偽申告で給付を受けた場合は、給付額に加えて最大2倍の加算金を返還する可能性があります。
2026年8月からの食費負担限度額
2026年8月から、介護保険施設の食費の基準費用額は1日1,545円です。負担限度額は所得段階と、施設入所かショートステイかによって異なります。
| 段階 | 施設入所の食費 1日 | ショートステイの食費 1日 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 300円 | 300円 |
| 第2段階 | 390円 | 600円 |
| 第3段階① | 680円 | 1,030円 |
| 第3段階② | 1,420円 | 1,360円 |
月額の負担は利用日数で変わります。たとえば第2段階の人が施設へ30日入所した場合、食費の負担限度額は390円×30日で11,700円が目安です。入退所日、外泊、欠食、施設との契約によって実際の請求は変わるため、請求書の食費欄を確認してください。
部屋代は施設と居室の種類で変わる
居住費・滞在費の負担限度額は、多床室、従来型個室、ユニット型個室などの部屋の種類で大きく変わります。2026年8月からの主な日額は次のとおりです。
| 居室の種類 | 第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② |
|---|---|---|---|---|
| 多床室・特養等 | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 多床室・老健/医療院(室料あり) | 0円 | 430円 | 430円 | 530円 |
| 多床室・老健/医療院等(室料なし) | 0円 | 430円 | 430円 | 430円 |
| 従来型個室・特養等 | 380円 | 480円 | 880円 | 980円 |
| 従来型個室・老健/医療院等 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,470円 |
| ユニット型個室的多床室 | 550円 | 550円 | 1,370円 | 1,470円 |
| ユニット型個室 | 880円 | 880円 | 1,370円 | 1,470円 |
同じ個室でも、特養の従来型個室と老健の従来型個室では上限が違います。施設から費用表を受け取ったら、「施設種別」「居室区分」「食費」「居住費」「認定後の日額」を一つずつ照合してください。
申請前にそろえる必要書類
必要書類は自治体によって少し違います。一般的には次を準備します。
- 介護保険負担限度額認定申請書
- 同意書
- 介護保険被保険者証または被保険者番号が分かるもの
- 本人のすべての預貯金口座を確認できる書類
- 配偶者がいる場合は配偶者のすべての預貯金口座を確認できる書類
- 有価証券・投資信託・金銀等の残高や評価額が分かる書類
- 負債を差し引く場合は借用証書や残高証明
- 代理人が申請する場合は本人確認書類と代理権を確認できる書類
- 成年後見人等が申請する場合は登記事項証明書など
通帳は、金融機関名、支店名、口座番号、名義人が分かるページと、直近の残高が分かるページをコピーします。定期預金がない場合でも、定期預金欄のページ提出を求める自治体があります。Web通帳は、名義と金融機関、口座番号、残高、基準日が分かる画面を印刷または保存します。
横浜市では、普通預金の残高ページについて申請日から直近2か月以内に記帳したものを案内しています。必要な記帳時期は自治体ごとに確認してください。
申請先と手続きの流れ
申請先は、介護保険被保険者証を発行している市区町村です。施設がある自治体ではなく、本人の介護保険の保険者へ提出します。住所地特例で住民票を施設へ移している場合も、被保険者証の保険者名を確認してください。
- 市区町村の介護保険担当窓口から申請書と案内を入手する
- 本人・配偶者の課税状況と収入を確認する
- すべての預貯金等を洗い出す
- 通帳、証券口座、負債資料などをコピーする
- 申請書と同意書へ記入する
- 窓口、郵送、オンラインなど自治体が認める方法で提出する
- 決定通知と負担限度額認定証を受け取る
- 認定証を施設またはショートステイ事業所へ提示する
- 請求書へ認定後の食費・居住費が反映されたか確認する
施設やケアマネジャーが書類準備を支援する場合はありますが、申請者は本人または家族等です。入所日が近いときは、認定前の請求がどうなるか、あとから精算できるかを市区町村と施設の両方へ確認します。
認定証を待たず、利用する月のうちに申請する
負担限度額認定は、審査で認められた場合、原則として市区町村が申請を受け付けた月の1日から適用されます。申請月より前の月までさかのぼって適用することはできません。施設の利用開始が決まったら、認定証が届くのを待つのではなく、その月のうちに申請を受理してもらうことが重要です。
たとえば、8月20日に施設を利用し始め、8月28日に市区町村が申請を受け付けた場合は、認定されれば8月1日からの適用になります。郵送した申請書が9月1日に到着した場合は、原則として9月1日からとなり、8月分には適用されません。
| 時点 | 確認すること |
|---|---|
| 入所・ショートステイが決まったとき | 申請方法、受付窓口、必要書類、不足書類がある場合の扱い |
| 郵送で申請するとき | 消印日ではなく到着日が受付日になるか、月末までに届く期限 |
| 認定証が届く前 | 申請日と受付状況を施設へ伝え、一時的な請求額と後日の精算方法を確認する |
| 認定証が届いた後 | 適用開始日、食費・居住費の負担額、支払済み分の返金または翌月調整の方法 |
月末が閉庁日である場合や、必要書類がそろっていない場合の受付方法は、市区町村によって異なります。郵送日だけで判断せず、介護保険担当窓口へ到着期限と不足書類の扱いを確認してください。
認定証の発行前に施設へ通常の金額を支払った場合、認定後の精算方法は施設や市区町村の案内に従います。申請書の控え、受付日が分かる記録、施設の領収書は保管してください。
認定証を受け取ったら施設へ提示する
認定証が届いただけでは、施設が新しい段階を把握できないことがあります。原本または施設が指定する方法で認定証を提示し、適用開始日と負担段階を確認します。
提示後は、利用明細や請求書の次の欄を見ます。
- 食費の日額と利用日数
- 居住費・滞在費の日額と利用日数
- 介護サービスの自己負担額
- 日用品、理美容、医療費などの保険外費用
- 特別な居室や食事の追加費用
- 外泊・入院・欠食日の扱い
認定前の金額で請求されている場合は、施設へ認定証の到着日と適用期間を伝えます。施設で精算できない、または一度全額を支払った場合の手続きは、市区町村へ償還払いの可否と必要書類を確認してください。
有効期限と更新手続きを忘れない
負担限度額認定は、一度認定されれば入所中ずっと自動継続する制度ではありません。多くの自治体では年度ごとに所得と資産を判定し、認定証の有効期限を7月31日までとしています。
更新案内が届いたら、前年と同じ口座であっても最新の残高資料を準備して申請します。住所変更や郵便転送の影響で案内が届かないこともあるため、6月から7月になったら認定証の期限を直接確認してください。
申請が遅れると、8月1日からの認定が間に合わず、一時的に食費・居住費を多く支払う可能性があります。遡って適用できる期間や精算方法は自治体によって異なるため、期限を過ぎたときはすぐに介護保険担当窓口へ連絡します。
非該当になったときの確認点
申請しても非該当になる主な理由は、世帯または配偶者が課税、預貯金等が上限超過、書類不足、税申告が未処理などです。決定通知に記載された理由を確認し、分からなければ市区町村へ判定項目を問い合わせます。
税の更正で配偶者が非課税になった、医療費や生活費の支払いで資産が基準以下になったなど、申請後に状況が変わることもあります。その場合は、変更が分かる書類をそろえて再申請できるか確認してください。
課税世帯で通常の要件に該当しなくても、施設入所によって残された配偶者の生活が困難になる場合などに、特例的な軽減の対象となる可能性があります。自治体ごとの要件があるため、「非課税でないから無理」と決めず窓口へ相談します。
負担限度額認定を申請する前の確認表
- 利用する施設・サービスが制度の対象か確認した
- 介護保険被保険者証の保険者名を確認した
- 本人の住民税課税状況を確認した
- 同一世帯全員の住民税課税状況を確認した
- 別世帯を含む配偶者の課税状況を確認した
- 課税年金の年間収入を確認した
- 遺族年金・障害年金などの非課税年金を確認した
- その他の合計所得金額を確認した
- 本人名義の銀行・ゆうちょ口座をすべて確認した
- 配偶者名義の口座をすべて確認した
- 定期預金の有無を確認した
- 株式・債券・投資信託を確認した
- 申告対象になる現金・金銀等を確認した
- 差し引ける負債の証明書を用意した
- 通帳を自治体指定の時期まで記帳した
- Web通帳の名義・口座番号・残高画面を保存した
- 申請書と同意書へ本人・配偶者の情報を記入した
- 代理申請に必要な本人確認・代理権書類を確認した
- 適用開始日と有効期限を確認した
- 認定証を施設へ提示する担当者を決めた
- 認定後の食費と居住費の日額を施設へ確認した
- 次回更新の時期を家族の予定表へ記録した
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- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」
- 横浜市「食費・部屋代の軽減(負担限度額認定)」
- 横浜市「負担限度額認定の申請に必要なもの」
- 札幌市「介護サービス利用者負担額の軽減制度」
- 市川市「介護保険負担限度額の申請方法」
- 大阪市「介護保険負担限度額認定申請書」
- 武蔵野市「負担限度額認定申請書」
本記事は2026年8月30日時点の公的情報をもとに、介護保険負担限度額認定の一般的な仕組みを整理したものです。申請書、必要書類、受付方法、適用期間、課税・所得・資産の判定は市区町村によって確認事項が異なります。提出前に、本人の介護保険被保険者証を発行している市区町村へご確認ください。


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