実家の空き家が「管理不全空家」として市区町村長から勧告を受けると、敷地の固定資産税・都市計画税を軽くしている「住宅用地特例」が外れます。2023年12月13日施行の改正空家法で、倒壊寸前の「特定空家」だけでなく、その手前の段階の空き家も対象になりました。指導の段階で改善すれば勧告は避けられます。通知が届いたら、まず文書の種類と期限を確認してください。
情報確認日:2026年10月8日。指導・勧告の判断基準、担当課、改善の確認方法は市区町村ごとに違います。実家の所在地の最新案内を確認してください。
手続きの前に用意するもの
- 市区町村から届いた文書(「助言」「指導」「勧告」など文書名と日付、改善期限が分かるもの)
- 固定資産税の納税通知書と課税明細書(土地の「住宅用地」欄や課税標準額を見る)
- 土地・建物の登記事項証明書、共有者・相続人の連絡先
- 外観・屋根・塀・庭木の写真と、雨漏りや破損の状況メモ
- 管理・修繕・解体の見積もり、相談できる管理会社や業者の連絡先
先に知っておく仕組み:勧告で外れるのは「住宅用地特例」
住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が小規模住宅用地(200㎡以下の部分)で6分の1、それを超える部分で3分の1に軽減されています。都市計画税にも同様の軽減があります。勧告を受けた空き家の敷地は、この特例の対象から外れます。
| 段階 | 主な対象 | 市区町村の措置 | 住宅用地特例 |
|---|---|---|---|
| 管理不全空家 | 放置すれば特定空家になるおそれがある空き家 | 指導 → 勧告 | 勧告で解除 |
| 特定空家 | 倒壊等の危険、衛生・景観上著しく有害など | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行 | 勧告で解除 |
よく「固定資産税が6倍」と言われますが、これは特例の6分の1から来た表現です。実際の増え方は土地の評価額や負担調整の状況、都市計画税の有無で変わります。金額は、実家所在地の資産税担当課に試算を聞くのが確実です。
1. 届いた文書が「指導」か「勧告」かを確認する
空家法に基づく措置は、管理不全空家なら「指導」の次が「勧告」です。指導の段階で改善すれば、勧告には進みません。文書の標題、根拠条文、改善を求める箇所、期限を確認してください。
自治体が独自の条例で「管理不全な空き家」に助言・指導をしている場合もあります。条例上の指導と、空家法に基づく管理不全空家等の指導・勧告は別の手続きです。どちらの文書なのか、担当課に確認しましょう。
ここまでの完了目安:文書の種類・根拠・指摘内容・改善期限が分かった。
2. 指摘された箇所を現地で確認し、写真で記録する
国のガイドラインは、屋根や外壁の破損、塀の傾き、窓ガラスの割れ、ごみの散乱、立木の越境、動物のすみつきなどを判断の参考としています。指摘された箇所を中心に、道路や隣地から見える状態を撮影します。
遠方で行けない場合は、近くの親族、管理会社、地元の工務店に現地確認を頼みます。日付入りの写真を残すと、改善前後の比較にも使えます。
ここまでの完了目安:指摘箇所の現状写真と、自分たちで直せるか業者が必要かの見立てがある。
3. 担当課へ連絡し、改善内容と期限を相談する
文書に記載された担当課(建築・住宅・空き家対策の部署)へ連絡します。連絡しないまま期限を過ぎるのが一番不利です。すぐに工事できない事情があれば、その理由と予定を伝えて相談してください。
「〇月〇日付の文書を受け取った、〇町〇番の空き家の相続人です。指摘のあった屋根と塀について、〇月中に業者の見積もりを取り、〇月末までに補修する予定です。改善の報告方法と、相続人が複数いる場合の連絡窓口を教えてください」
相続登記が済んでいない、共有者と連絡が取れないなどの事情も伝えます。自治体によっては、空家等管理活用支援法人や相談窓口を紹介してもらえます。
ここまでの完了目安:担当者名、改善の範囲、報告方法、目標日が決まった。
4. 修繕・管理委託・解体のどれで改善するか決めて実行する
改善の方法は大きく3つです。
- 修繕:屋根・外壁・塀の補修、窓の養生、草木の伐採など。家を残して売る・貸す予定なら基本の選択です。
- 管理委託:定期巡回、通気、草刈りを管理会社やシルバー人材センター等に依頼します。修繕とあわせて使います。
- 解体:建物を取り壊すと危険は解消しますが、更地になるため住宅用地特例は適用されなくなります。解体後の固定資産税の見込みも確認してから決めます。
共有の実家なら、費用負担と方針を共有者で決めてから発注します。補助金を使う場合は、多くの制度で契約・着工前の申請が必要です。
ここまでの完了目安:改善方法と費用負担が決まり、工事・作業が完了した。
5. 改善を報告し、指導・勧告の終了を確認する
作業が終わったら、改善後の写真や工事の完了書類を添えて担当課へ報告します。自治体が現地確認をして、改善が認められれば措置は終わります。勧告を受けた後でも、改善されれば勧告は撤回されます。
電話だけで済ませず、報告日、担当者、終了の扱いを記録してください。文書で通知が出るかも確認しておくと安心です。
ここまでの完了目安:改善報告が受理され、指導・勧告の終了(撤回)を確認した。
6. 翌年度の課税明細書で住宅用地特例の扱いを確かめる
固定資産税は毎年1月1日(賦課期日)の状況で課税されます。勧告がこの日時点で残っていると、その年度は特例が外れます。逆に、1月1日までに勧告が撤回されれば、その年度から特例が戻るのが一般的な扱いです。
翌年度の課税明細書が届いたら、土地の課税標準額や「住宅用地」の表示を前年と比べます。疑問があれば資産税担当課に照会してください。
ここまでの完了目安:次年度の課税内容を確認し、管理の頻度と担当を家族で決めた。
勧告までの流れと、家族が動くタイミング
| 段階 | 市区町村の動き | 家族がやること |
|---|---|---|
| 苦情・通報 | 現地を外から確認し、所有者・相続人を調べる | この時点で連絡が来たら、すぐ現地を確認する |
| 助言・指導 | 改善してほしい箇所と期限を文書で伝える | 担当課に連絡し、改善の予定を伝えて実行する。ここで止めるのが最も負担が小さい |
| 勧告 | 改善されないとき、期限を示して勧告する | 翌年度から住宅用地特例が外れる前提で、改善か売却・解体を急ぐ |
| 命令(特定空家のみ) | 勧告に従わないとき、命令を出す | 命令違反は50万円以下の過料の対象。最終的に行政代執行で費用を請求されることもある |
遠方・共有で管理しきれないときの選択肢
実家から遠く、定期的な管理が難しい場合は、管理を続けること自体を見直す時期かもしれません。管理会社やシルバー人材センターへの委託、空き家バンクでの売却・賃貸、解体して土地を売る、などを比べます。市区町村が「空家等管理活用支援法人」を指定している地域では、管理や活用の相談先として紹介してもらえます。
共有者が多く方針が決まらない場合も、市区町村への連絡と最低限の安全対策(倒れそうな塀の撤去、割れた窓の養生など)は先に行いましょう。周囲に被害が出ると、損害賠償を求められるおそれがあります。
よくある質問
空き家というだけで固定資産税は上がりますか?
上がりません。特例が外れるのは、市区町村長から管理不全空家・特定空家として勧告を受けた場合です。適切に管理していれば、空き家であっても住宅用地特例は続きます。
相続登記が終わっていなくても対応が必要ですか?
必要です。自治体は戸籍等で相続人を調べて通知します。登記の有無にかかわらず、相続人は管理の責任を問われる立場です。相続登記の期限も別にあるため、あわせて進めてください。
解体すれば税金は下がりますか?
建物の固定資産税はなくなりますが、土地は住宅用地でなくなるため、土地の税額は上がるのが通常です。売却や活用の予定と合わせて判断しましょう。
通知が施設に入っている親の名前で届きました。
所有者である親あての通知です。子が代わりに市区町村とやり取りする場合は、親の了承を得て、相続人・家族であることを伝えます。親の判断能力が低下していて修繕や解体の契約を結べないときは、成年後見制度の利用も検討してください。
あわせて確認したい手続き
出典・確認先
- 国土交通省|空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
- 国土交通省|改正空家法の関連情報(管理不全空家等のガイドライン)
- 熊本県|空家等対策の推進に関する特別措置法について
- 鹿児島県|空家法の改正について

