親の介護が始まると、最初に決めることのひとつがケアマネジャー(介護支援専門員)です。要介護1〜5の認定を受けた方が自宅で暮らしながらサービスを使う場合、居宅介護支援事業所と契約し、そこに所属するケアマネジャーがケアプランを作成します。ケアマネジャーは、心身の状況や環境に応じたケアプランをつくり、そのプランどおりにサービスが提供されるよう事業者や関係機関との連絡・調整を行う役割を担います。
費用について先にお伝えします。介護サービス情報公表システムには「ケアプランの作成にあたって、利用者負担はありません」と明記されています。つまり、事業所を選ぶときも、途中で変えるときも、ケアマネジャーに支払う自己負担額を心配する必要はありません。
相性が合わないと感じたときは、変更できます。おおまかな流れは、次の事業所を探す、新しい事業所と契約する、市区町村へ「居宅サービス計画作成依頼(変更)届出書」を出す、の三段階です。要支援1・2の方は地域包括支援センターが窓口になります。以下、公的情報にもとづいて順に整理します。
ケアマネジャーと居宅介護支援事業所の役割
居宅介護支援は「介護の相談・ケアプラン作成」を担うサービスです。ケアマネジャーが自宅を訪問して心身の状況や生活環境を把握し、課題を分析します(アセスメント)。
その後、本人・家族・サービス提供事業者と話し合い、利用するサービスの種類や回数を決め、利用手続きを進めます。訪問介護やデイサービス、福祉用具貸与などをどう組み合わせるかを一緒に考える立場だと考えるとわかりやすいでしょう。
ケアプラン作成に利用者負担はありません
訪問介護やデイサービスには原則1〜3割の自己負担がありますが、居宅介護支援(ケアプラン作成)については利用者負担がないと公表システムに記載されています。
そのため、事業所を変更しても、旧事業所と新事業所の双方に利用者が支払う費用は発生しません。「途中で変えると余計にお金がかかるのでは」という理由で我慢する必要はない、という点は押さえておいてください。
要支援の場合は地域包括支援センターが窓口
要支援1・2と認定された場合、介護予防サービス計画は地域包括支援センターに相談して作成します。地域包括支援センターは市町村が設置主体で、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などが配置され、総合相談支援、権利擁護、介護予防ケアマネジメント、包括的・継続的ケアマネジメント支援を担っています。
なお令和6年4月1日から、指定居宅介護支援事業所も指定介護予防支援事業者の指定を受けられるようになり、地域包括支援センターから委託を受けなくても要支援の方と直接契約してケアプランを作成できます。ただし総合事業のみを利用する場合や基本チェックリストによる事業対象者は、従来どおり地域包括支援センターとの契約になります。
| 本人の状態 | 計画の名称 | 作成を担う主体 |
|---|---|---|
| 要介護1〜5 | 居宅サービス計画(ケアプラン) | 居宅介護支援事業所のケアマネジャー |
| 要支援1・2 | 介護予防サービス計画 | 地域包括支援センター、または指定を受けた居宅介護支援事業所 |
| 事業対象者(基本チェックリスト) | 介護予防ケアマネジメント | 地域包括支援センター |
居宅介護支援事業所の探し方
探し方の入口は主に三つあります。いずれも公的な窓口や仕組みを使う方法です。
- 地域包括支援センターに相談する。地域の高齢者と家族の総合相談窓口で、事業所一覧をもらえることが一般的です
- 市区町村の介護保険担当窓口で、管内の事業所リストを受け取る
- 介護サービス情報公表システムで、地域とサービス種別から自分で検索する
選ぶ側の権利も基準で定められています。運営基準では、契約前の説明として「利用者は複数の指定居宅サービス事業者等を紹介するよう求めることができること」を伝えることとされています。また事業者は正当な理由なく提供を拒んではならず、自ら適切な支援を提供することが困難な場合は他の事業者を紹介するなどの措置を講じることとされています。
介護サービス情報公表システムの使い方
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、全国の介護サービス事業所を検索・閲覧できます。トップページで都道府県を選び、サービスの種類から「居宅介護支援」を指定し、市区町村名などで絞り込む流れです。
公表されている情報は大きく二種類です。基本情報として所在地、運営方針、サービス提供地域、営業時間、定休日、サービスの特色、利用者の状況、従業者の状況などが載ります。運営情報としては、利用者の権利擁護、サービスの質の確保への取組、相談・苦情等への対応、外部機関等との連携、事業運営・管理、安全・衛生管理等、従業者の研修等の7分野が公表されています。
複数の事業所を並べて比較でき、項目の違いをハイライト表示することもできます。まずは自宅から通いやすい範囲で数件を比べ、営業時間や従業者数、苦情対応の体制を確認してから問い合わせると効率的です。
相性が合わないと感じたときの整理の仕方
変更を考える前に、何が困っているのかを言葉にしておくと、次の事業所選びにも役立ちます。連絡が取りにくい、説明が足りない、本人の希望が反映されない、といった具体的な事実を書き出してみてください。
選択肢は二つあります。ひとつは同じ事業所の中で担当者の交代を相談する方法、もうひとつは事業所ごと変更する方法です。前者であれば市区町村への届出は通常不要で、事業所の管理者に相談することになります。
変更理由は困っている事実と希望する対応で伝える
ケアマネジャーを変更したい理由を、人格の評価ではなく、連絡や支援で困っている事実に置き換えます。「連絡が取れない」なら、連絡した日、方法、返答までの日数を記録します。「希望が反映されない」なら、本人が伝えた希望と、現在のケアプランで合わない箇所を書き出してください。
現在の事業所へは、次のように伝えます。
「連絡方法と支援方針について何度か相談しましたが、今後も調整が難しいため、○月から居宅介護支援事業所を変更したいと考えています。現在のケアプラン、サービス利用状況、認定情報、直近の経過を、新しい事業所へ引き継いでください。必要な解約手続きと最終担当日も教えてください。」
詳しい理由を一方的に責める形で説明する必要はありません。ただし、服薬、転倒、認知症の症状、家族の介護負担など、今後の支援に必要な事実は新しい事業所へ伝えます。本人や家族だけでは話しにくい場合は、新しい事業所、地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口へ調整を依頼してください。
ケアマネジャー・事業所を変更する手順
| 順序 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 新しい事業所を探し、受け入れ可能か確認する | 公表システムや地域包括支援センターを利用。空き状況は事業所ごとに異なります |
| 2 | 新しい事業所と契約し、重要事項の説明を受ける | 複数事業者の紹介を求められることも説明事項に含まれます |
| 3 | 現在の事業所に変更の意向を伝える | これまでの経過やケアプランの引き継ぎを依頼します |
| 4 | 市区町村へ居宅サービス計画作成依頼(変更)届出書を提出する | 要支援の場合は介護予防サービス計画作成・介護予防ケアマネジメント依頼(変更)届出書 |
届出の期限には注意が必要です。大阪市の案内では、サービスを利用する日までに提出すること、サービス提供を行う月中に提出がない場合は償還払いや全額自己負担になる場合があること、月をさかのぼっての受付は原則行わないことが示されています。
提出者は原則として被保険者本人ですが、世田谷区の例では窓口または郵送による届出はケアマネジャーによる代行提出が可能とされています(電子申請は代行不可)。様式や提出先、電子申請の可否は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村のホームページで必ず確認してください。
サービスを止めないための引継ぎ確認表
- 現在のケアプランと週間サービス予定表
- 利用中の事業所名、担当者、契約期間、利用曜日
- 要介護・要支援区分と認定の有効期間
- 介護保険被保険者証、負担割合証などの確認状況
- 主治医、薬局、訪問看護など医療関係者の連絡先
- 転倒、入院、認知症の症状など直近の変化
- 本人が続けたいサービスと、変更したい支援内容
- 家族が対応できる曜日・時間と緊急連絡先
- 現在の事業所の最終担当日と、新しい事業所の開始日
- 市区町村へ提出する変更届の様式、提出者、提出日
先に現在の事業所だけを解約すると、ケアプランの作成やサービス事業所との調整が途切れることがあります。新しい事業所が受け入れ可能か、いつから担当できるか、市区町村への届出を誰が出すかを確認してから最終日を決めてください。
届出の期限や必要書類は自治体によって異なります。大阪市の案内は、居宅介護支援事業者などを変更する場合を改めて届出が必要な場面に挙げ、契約後速やかな提出と、サービス開始日までの届出を案内しています。親の住所地の市区町村で、様式、郵送・電子申請、代行提出の可否を確認してください。
困ったときの相談先
相談には段階があります。まず事業者に伝え、改善されない場合はケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、それでも解決しない場合は市町村や国民健康保険団体連合会が調査を行い、必要な指導・助言を行う仕組みです。
感情的な行き違いに見えることでも、記録に残して第三者に相談すると整理が進む場合があります。変更そのものは制度上認められた選択であり、遠慮する必要はありません。
本記事は厚生労働省・介護サービス情報公表システムおよび自治体の公表資料を確認して作成しました(確認日:2026年8月17日)。制度の運用や届出様式は市区町村により異なるため、最終的な判断はお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
ケアマネジャーへ最初に聞く7つの質問
契約前の面談では、話しやすさだけでなく、連絡方法と緊急時の体制を確認します。複数の事業所を比べる場合も、同じ質問をすると違いが見えます。
- □ 連絡しやすい曜日・時間帯と連絡方法
- □ 不在時や長期休暇中の代替担当者
- □ 急な体調変化や家族の都合にどう対応するか
- □ 本人と家族への訪問・連絡の頻度
- □ サービス事業所を紹介するときの選択肢
- □ 利用料や保険外費用をどの段階で説明するか
- □ 担当変更を希望するときの相談先と手順
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参考にした公的情報
- 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの?-居宅介護支援」
- 介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」
- 介護サービス情報公表システム「サービス編(介護保険の解説)」
- 介護サービス情報公表システム「最初にお読みください」
- 厚生労働省「地域包括支援センターについて」
- 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」
- 横浜市「介護予防支援・介護予防ケアマネジメント(地域包括支援センター・指定居宅介護支援事業所)」
- 大阪市「居宅(介護予防)サービス計画作成・介護予防ケアマネジメント依頼(変更)届出書について」
- 世田谷区「居宅サービス計画作成依頼(変更)・介護予防ケアマネジメント依頼(変更)の届出」
- 神奈川県「介護保険に関する相談について」


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