相続の戸籍集めと法定相続情報一覧図|必要書類・申出手順

Featured image 227 5710cadffa6ef3224bb0ae6d2a5823dd.png 相続・遺言・死後手続き

親が亡くなった後、銀行、証券会社、法務局などから「出生から死亡までの戸籍をそろえてください」と言われることがあります。現在の戸籍謄本を1通取れば終わるとは限りません。結婚、転籍、戸籍制度の改製などで戸籍が移っていれば、前の戸籍へさかのぼって集めます。

提出先が複数ある場合に役立つのが「法定相続情報証明制度」です。戸籍の束と相続関係を表した一覧図を法務局へ提出すると、登記官の認証文が付いた法定相続情報一覧図の写しを、無料で必要な通数受け取れます。

この記事では、親の戸籍を集める順番、広域交付を利用できる範囲、法定相続情報一覧図の作り方と申出先を整理します。相続放棄や遺産分割の結果は一覧図に反映されないなど、利用前に知っておきたい注意点も確認してください。

法定相続情報一覧図は戸籍の束を一枚にまとめる制度

法定相続情報一覧図は、亡くなった人と法定相続人の関係を一覧にした書面です。相続人が作成した一覧図と戸籍関係書類を法務局へ提出し、登記官が戸籍の内容と合っていることを確認すると、認証文付きの写しが交付されます。

比較点戸籍の束法定相続情報一覧図の写し
戸籍・除籍・改製原戸籍など複数枚相続関係を整理した認証文付きの一覧図
取得・申出先市区町村管轄を選べる法務局
費用戸籍の交付手数料が必要一覧図の写しの交付は無料
複数手続き返却を待って次へ回す場合がある必要通数を同時に受け取り、並行して提出しやすい
分かること身分関係の記録戸籍から確認できる法定相続人
分からないこと遺産の内容、遺産分割結果、相続放棄後の実際の取得者などは別資料で確認

銀行の預金払戻し、相続登記、相続税申告、死亡に伴う年金手続きなどで利用できます。ただし、すべての手続きを一覧図だけで完了できるわけではありません。遺産分割協議書、印鑑証明書、通帳など、提出先ごとの追加書類が必要です。

制度全体は法務局の法定相続情報証明制度で確認できます。相続手続き全体の期限を先に整理したい場合は、親が亡くなったときの手続き一覧も確認してください。

最初に「出生から死亡まで」の戸籍を集める

最初に、亡くなった親の死亡記載がある戸籍謄本を取ります。その戸籍に「従前戸籍」や前の本籍が記載されていれば、前の本籍地へさかのぼります。出生時の戸籍まで連続してつながるように、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍を集めます。

戸籍が必要なのは、子どもや配偶者の存在を確認するためです。現在の家族が知らなかった婚姻歴や認知した子が戸籍から分かる場合もあります。家族の記憶だけで相続人を決めず、戸籍で確認します。

  • 現在の戸籍から一つ前の本籍を確認する
  • 転籍や婚姻で移る前の戸籍を請求する
  • 改製の記載があれば改製原戸籍も確認する
  • 各戸籍の在籍期間が途切れていないか並べる
  • 出生の記載がある戸籍まで到達したか確認する
  • 死亡日と死亡記載が確認できるかを見る

兄弟姉妹やおい・めいが相続人になる場合は、亡くなった親本人の戸籍だけで足りないことがあります。親の父母の出生から死亡までの戸籍、先に亡くなった兄弟姉妹の戸籍など、相続順位を確認するための追加書類が必要です。

戸籍の種類と読み方を整理する

書類主な意味確認する箇所
戸籍全部事項証明書現在の戸籍に入っている全員の証明本籍、筆頭者、身分事項、従前戸籍
除籍謄本死亡・婚姻・転籍などで全員が抜けた戸籍在籍期間、次に移った戸籍
改製原戸籍制度変更で作り替える前の戸籍改製後の戸籍に移記されなかった記載
戸籍の附票その戸籍にいる間の住所履歴登記簿上の住所とのつながり
住民票の除票死亡などで消除された住民票最後の住所、本籍の記載

法定相続情報証明の申出では、亡くなった人の住民票の除票も原則必要です。取得できない場合は、戸籍の附票を用意します。不動産の登記名義人の住所と最後の住所が異なる場合は、住所の移り変わりを追加資料でつなぐ必要があります。

古い戸籍は手書きや旧字体で読みにくいことがあります。「高」と「髙」のような文字の違い、日付、従前戸籍を自己判断で置き換えず、市区町村の戸籍窓口や法務局の手続案内へ確認してください。

広域交付なら最寄りの市区町村でまとめて請求できる

2024年3月1日から戸籍証明書等の広域交付が始まり、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました。本籍地が何度か変わっていても、一つの窓口でまとめて請求できる場合があります。

広域交付で請求できるのは、本人、配偶者、父母・祖父母などの直系尊属、子・孫などの直系卑属です。請求できる本人が窓口へ行く必要があり、郵送や代理人による広域交付は利用できません。一部事項証明書・個人事項証明書、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外です。

兄弟姉妹の戸籍は、兄弟姉妹という関係だけでは広域交付の対象になりません。必要な戸籍の範囲が複雑な場合や、広域交付で取れない戸籍がある場合は、本籍地の市区町村へ個別に請求します。制度の範囲は法務省の戸籍証明書等の広域交付で確認できます。

法定相続情報証明に必要な書類

書類必須・場合別主な取得先
亡くなった人の出生から死亡までの戸除籍謄本必須本籍地の市区町村
亡くなった人の住民票の除票原則必須最後の住所地の市区町村
相続人全員の現在の戸籍謄抄本必須。死亡日以後に発行されたもの各相続人の本籍地の市区町村
申出人の氏名・住所を確認できる公的書類必須運転免許証の写し、マイナンバーカード表面の写し、住民票など
各相続人の住所証明書一覧図へ住所を記載する場合各相続人の住所地の市区町村
委任状・代理権限を示す書類代理人が申し出る場合申出人が作成、資格者証明など
亡くなった人の戸籍の附票住民票の除票を取得できない場合本籍地の市区町村

相続人全員の現在戸籍は、亡くなった人の死亡日以後に発行されたものを用意します。死亡前に取った戸籍では、その後の身分関係を確認できないためです。申出人の運転免許証やマイナンバーカードのコピーには、原本と相違ない旨を記載し、申出人または代理人が記名します。

必要書類の公式一覧は、法務局のSTEP1 必要書類の収集で確認できます。家庭ごとに戸籍の構成が違うため、「この表の7点だけで必ず足りる」という意味ではありません。

一覧図は法務局の様式例から作る

戸籍がそろったら、亡くなった人と法定相続人の関係をA4縦の一覧図にします。家系図に似ていますが、思い出や通称ではなく、戸籍と住民票の記載に合わせて作成します。

  • 亡くなった人の最後の本籍、最後の住所、氏名を記載する
  • 生年月日と死亡年月日を記載する
  • 戸籍から判明した法定相続人を記載する
  • 相続人の氏名、生年月日、続柄を記載する
  • 作成日、作成者の住所・氏名を記載する
  • 線のつながりと続柄が戸籍に合っているか確認する

相続人の住所は任意記載です。住所を載せる場合は、各相続人の住民票の写し、印鑑証明書、戸籍の附票などの住所証明書を添えます。住所を記載しておくと、相続登記などで住所証明書の提出を省略できる場合があります。

続柄を単に「子」と記載する方法もありますが、相続税申告など利用できない手続きが生じる場合があります。利用先が相続税申告を含むなら、法務局の様式例に従い、戸籍に記載された続柄を使います。様式は主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例から選べます。

申出先は四つの地域から選べる

法定相続情報証明の申出先は、次のいずれかを管轄する法務局から選べます。

  • 亡くなった人の死亡時の本籍地
  • 亡くなった人の最後の住所地
  • 申出人の住所地
  • 亡くなった人名義の不動産所在地

窓口へ持参するほか、郵送でも申出できます。郵送で一覧図の写しと戸籍関係書類の返却を希望する場合は、申出書への記載、返信用封筒、郵便切手が必要です。管轄と郵送方法は、提出予定の法務局へ事前に確認してください。

申出ができるのは、亡くなった人の相続人またはその相続人です。委任を受けた親族のほか、弁護士、司法書士、行政書士、税理士など一定の資格者が代理できます。亡くなった人や相続人が日本国籍を有せず、必要な戸除籍謄抄本を提出できない場合は制度を利用できません。

必要通数は提出先を数えて決める

一覧図の写しは無料で必要通数の交付を受けられます。銀行が3行、証券会社が1社、相続登記と相続税申告に使うなら、提出予定先を数え、同時進行する手続き数に予備を加えて申出通数を決めます。

「無料」なのは一覧図の写しの交付手数料

法定相続情報一覧図の写しは、必要な範囲の通数について交付手数料0円です。ただし、申出に使う戸籍・除籍・改製原戸籍、住民票の除票、相続人の住所証明書などの取得手数料は別に必要です。郵送で申し出る場合は、法務局へ送る費用と返送用の郵便料も申出人が負担します。

先に銀行、証券会社、税務署、法務局などの提出先を数え、一覧図を何通使うか決めてから申し出ると、追加の再交付を減らせます。再交付を申し出られるのは当初の申出人で、一覧図は申出日の翌年から起算して5年間保存されます。

提出先によっては原本還付に対応したり、独自の有効期間を設けたりする場合があります。「一覧図があれば戸籍も印鑑証明書も不要」と決めつけず、各銀行、証券会社、税務署、年金事務所へ必要書類を確認してください。

法務局へ提出した戸籍謄本等は、確認後に返却されます。一方、申出人の本人確認書類として提出したコピーは原則返却されません。住民票の原本還付を希望する場合などは、原本と相違ない旨を記載したコピーを添える方法を法務局へ確認します。

一覧図に相続放棄や遺産分割結果は載らない

法定相続情報一覧図が示すのは、戸籍から確認できる法定相続人です。家庭裁判所で相続放棄をした人がいても、一覧図には法定相続人として記載される場合があります。遺産分割協議で財産を取得しない人も同様です。

一覧図は、誰がどの財産を取得したかを証明する書類ではありません。相続放棄申述受理証明書、遺産分割協議書、遺言書などは別途必要です。相続放棄を検討している場合は、戸籍集めと並行して3か月の期限を確認してください。詳しくは相続放棄の期限と必要書類で整理しています。

一覧図に載っている人へ自動的に財産が渡るわけでもありません。金融機関や法務局は、一覧図で相続関係を確認したうえで、遺言や遺産分割の内容、本人確認書類などを審査します。

再交付できるのは当初の申出人

一覧図の写しが追加で必要になった場合は、当初申出をした法務局へ再交付を申し出られます。法務局の案内では、一覧図は申出日の翌年から起算して5年間保存され、この期間内であれば再交付の対象です。

再交付を申し出られるのは、当初の申出書に「申出人」として記載された人です。一覧図に載っている他の相続人でも、申出人でなければ再交付を受けられません。誰を申出人にするかは、今後の手続きを担当する人を考えて決めます。

一覧図の交付後に相続人の住所が変わっても、住所変更を理由とする再申出はできません。住所を載せるか迷う場合は、利用予定の相続登記や金融手続きでどの書類を省略できるか確認してから決めてください。

戸籍集めから申出までのチェックリスト

  • □ 親の死亡記載がある戸籍を取得した
  • □ 従前戸籍を確認して一つ前へさかのぼった
  • □ 出生から死亡まで戸籍が連続している
  • □ 除籍謄本と改製原戸籍の抜けがない
  • □ 兄弟姉妹が相続人になる場合の追加戸籍を確認した
  • □ 広域交付で取れる戸籍を窓口へ確認した
  • □ 広域交付で取れない戸籍を本籍地へ請求した
  • □ 親の住民票の除票を取得した
  • □ 住民票の除票が取れない場合は戸籍の附票を取得した
  • □ 相続人全員の死亡日以後の現在戸籍を取得した
  • □ 申出人の本人確認書類を用意した
  • □ 相続人の住所を一覧図へ載せるか決めた
  • □ 住所を載せる相続人の住所証明書を用意した
  • □ 法務局の様式例から家族関係に合うものを選んだ
  • □ 一覧図の氏名・日付・続柄を戸籍と照合した
  • □ 被相続人の最後の本籍と住所を確認した
  • □ 作成日と作成者の住所・氏名を記載した
  • □ 申出書を記入した
  • □ 四つの候補から申出先法務局を決めた
  • □ 提出先を数えて必要な交付通数を決めた
  • □ 郵送の場合は返信用封筒と切手を用意した
  • □ 各利用先へ追加書類と有効期間を確認した
  • □ 相続放棄・遺産分割の書類は別に用意した
  • □ 提出した書類と連絡内容の控えを残した

よくある質問

Q. 法定相続情報一覧図は必ず作らなければなりませんか?
義務ではありません。従来どおり戸籍の束を提出して相続手続きを進められます。銀行や不動産が複数あり、同時に手続きを進めたい場合に一覧図が役立ちます。

Q. 一覧図を作れば相続人同士の話合いは不要ですか?
不要にはなりません。一覧図は法定相続人を確認する書面で、遺産の分け方を決める書面ではありません。遺言がない場合は、必要に応じて相続人間で遺産分割協議を行います。

Q. 戸籍に有効期限はありますか?
手続きごとに「発行後3か月以内」など独自の条件を設ける提出先があります。法定相続情報証明に使う相続人の現在戸籍は、亡くなった人の死亡日以後に発行されたものが必要です。利用先へ発行日の条件を確認してください。

Q. 自分で一覧図を作るのが難しい場合は?
法務局の記載例と手続案内を利用できます。戸籍の読み取りが難しい、相続人が多い、数次相続が発生している、不動産登記も任せたい場合は、司法書士などへ依頼する方法があります。

制度内容の確認日:2026年8月29日。戸籍の交付手数料、郵送方法、提出先が求める発行日の条件は取扱いが異なる場合があります。申出前に、市区町村の戸籍窓口、提出予定の法務局、一覧図を利用する各機関へ確認してください。

戸籍を一度そろえ、手続きを並行して進める

法定相続情報一覧図を作る場合でも、最初の戸籍集めは省略できません。まず死亡記載のある戸籍から出生時までさかのぼり、相続人全員の現在戸籍と住民票の除票をそろえます。その情報を一枚の一覧図へ正確に移し、法務局へ申し出ます。

一覧図の写しを複数受け取れば、銀行、証券会社、相続登記などを並行して進めやすくなります。不動産がある場合は戸籍集めだけで安心せず、相続登記の期限と家の管理も確認してください。空き家になる可能性があるなら、親の家が空き家になるときの手続きも合わせて整理します。

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