遺産分割がまとまらず、相続登記の期限が近づいている場合は、「相続人申告登記」で基本的な申請義務を果たせます。実家を管轄する法務局へ、親の死亡と、自分が相続人であることを示す書類などを提出してください。
相続人申告登記で義務を果たせるのは、申し出た人です。実家を自分名義にするには、通常の相続登記が必要です。売却や抵当権の設定をする場合や、後に遺産分割が成立した場合は、その登記も進めてください。
以下では、申出書の作成から完了確認までの手順を説明します。実家を取得する人がすでに決まり、書類もそろっている場合は、通常の相続登記を先に検討してください。
準備するもの
- 実家の土地・建物の所在、地番・家屋番号または不動産番号
- 亡くなった親の死亡と、自分との相続関係を示す戸籍の証明書
- 親の登記上の住所と戸籍の本籍をつなぐ資料が必要かの確認
- 申出人の住所を確認する資料と、氏名のふりがな・生年月日
- 共同で申し出る人、代理を頼む人、各人の期限のメモ
1. 自分の期限と申出の対象を確認する
相続登記の基本的な期限は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内です。2024年4月1日より前に相続したことを知っていて、登記が済んでいない不動産は、原則2027年3月31日が期限です。
相続登記は、2024年4月1日から義務化されています。この記事の確認日である2026年10月5日時点では、過去の相続についての経過措置の期限は2027年3月31日です。
遺産分割の話合いや資料集めに時間がかかる場合は、相続人申告登記で期限内に義務を果たすことを検討してください。義務の内容は法務省の申請義務化Q&Aで確認できます。
兄弟3人のうち1人が自分の分を申し出た場合、原則として義務を果たした扱いになるのは、その人だけです。全員分をまとめる場合は、全員を申出人として連名で申し出る方法や、代理の手続きを確認してください。
ここまでの目安:誰の、どの不動産について、いつまでに義務を果たす必要があるかを書き出せた。
2. 実家の登記と管轄法務局を調べる
土地と建物の登記記録から、名義人、所在地、地番・家屋番号をメモしてください。地番は普段使う住所の表示と異なる場合があります。固定資産税の通知と登記記録を照合して、申出書に記入します。
土地が複数ある場合や、私道の持分、実家以外の不動産もある場合は、対象の一覧を作ってください。手元の税資料などとも照合し、申し出る不動産を確認します。
提出先は、不動産を管轄する法務局です。不動産の所在地から管轄を調べてください。複数の管轄にまたがる場合は、それぞれの法務局へ提出します。
問い合わせ例:「亡父名義の〇市〇番の土地と建物について、子の私が相続人申告登記をします。遺産分割は未了です。管轄、子が申し出る場合の戸籍、住所資料、郵送時の完了通知の受け取り方を確認したいです」
ここまでの目安:対象の土地・建物が一覧になり、申出先の法務局が分かった。
3. 相続関係に合う戸籍・住所資料を集める
親の子として申し出る場合は、一般に、親の死亡日と親子関係を示す証明書を用意します。これに加え、親が亡くなった日以後に発行された自分の戸籍の証明書も必要です。1通で必要な事項を確認できれば、その1通で足りる場合があります。
相続人申告登記の戸籍は、自分の相続関係を示すために集めます。通常の相続登記で、全相続人と法定相続分を確定するための戸籍一式とは、必要な範囲が異なります。兄弟姉妹として申し出る場合や、祖父から親、親から自分へと相続が続いている場合は、追加の戸籍を用意してください。
親の本籍と登記記録の住所が違う場合は、住民票の除票や戸籍の附票などで、同じ人物であることを示す資料を確認してください。自分の住所資料は、申出書に住民票上の氏名のふりがなと生年月日を記載するなど、条件を満たすと省略できる場合があります。
必要書類は相続関係で変わるため、法務省「相続人申告登記について」の記載例を選んで確認してください。海外在住など住民票がない場合は、住所資料を省略できません。
ここまでの目安:自分の相続関係に必要な戸籍と住所資料を確認し、不足分が分かった。
4. 申出書を作って法務局へ提出する
公式ページで最新の申出書と、自分の相続関係に合う記載例を入手してください。申出人、亡くなった親、対象不動産などを記入し、不備の連絡を受けられる電話番号も書きます。提出前に、申出書と添付書類の控えを残してください。
提出方法は、窓口、郵送、オンラインから選べます。申出書への押印と、オンライン申出の電子署名は不要です。オンラインでは、公式の申請システムを使い、案内された方法で添付資料を提出してください。通常のメールで申出書を送る方法では受け付けられません。
相続人申告登記の登録免許税はかかりません。戸籍等の取得費、郵送費、司法書士に依頼する場合の報酬は、別に用意してください。
通常の相続登記も併せて任せたい場合は司法書士、遺産分割の争いや相続人としての地位に問題がある場合は弁護士が相談先になります。
ここまでの目安:必要書類を付けて申出を提出し、控えと連絡先を保管できた。
5. 完了通知を保管し、次の登記を管理する
法務局から書類の不足や記入内容の修正を求められたら、直す箇所と提出期限を聞き、追加書類や訂正を提出してください。この修正を「補正」といいます。法務局は、登記が完了すると、その旨を通知します。受け取った通知で、申出人と対象不動産を確認してください。
完了通知の仕組みは不動産登記規則の相続人申告登記に関する規定に示されています。提出後は、完了通知を受け取って確認してください。郵送や窓口受付の記録も、控えと一緒に保管します。
その後、遺産分割で不動産を取得した場合は、原則として分割成立日から3年以内に、その結果に沿う相続登記を申請してください。相続人申告登記とは別に必要な手続きです。法務省の義務履行方法の説明も参照してください。
家族の管理表には、「申告登記完了」と「名義変更完了」を別々に記録してください。売却することになったら、相続登記と必要書類の準備を進めます。
ここまでの目安:完了通知を保管し、遺産分割成立日と、その後の相続登記の期限を管理できる。
次の作業に進む記事
出典・確認日
2026年10月5日確認。本文中の法務省・法務局の案内と規則を参照しました。取得を知った時期、遺産分割の成立時期、相続関係によって必要な登記と期限が変わる場合は、管轄法務局か司法書士へ確認してください。

