成年後見の申立ては、本人が困っている契約や支払いを書き出すことから始めます。家庭裁判所が、本人に必要な支援と権限を判断する手続きです。親の財産を家族へ移すための手続きではありません。まず「何を、いつまでに進めたいか」を一つ書き、次の6段階で準備してください。
このページは家族が準備するための案内です。申立書の作成・提出を当サイトが代行したり、後見・保佐・補助の適用を判定したりするものではありません。以下の段取り・保存方法は編集上の提案、要件・様式・費用は各公式案内に基づきます。確認日:2026年10月5日。
2026年の改正法と現在の手続き:改正法は6月17日成立、24日公布です。成年後見の見直しは公布から2年6か月以内の政令で定める日に施行されるため、成立だけを理由に現行の後見・保佐・補助を使わなくてよいとは判断できません。本稿は現在の裁判所案内で進めます。法務省の成立・施行の説明
STEP 1 本人の困りごと、申立人、住所地を確認する
本人の言葉、支払いに困った日、契約が止まっている理由、放置すると困る期限をメモしてください。家族が実家を売りたい場合も、本人の住まい・生活費をどう守るかを考えましょう。本人の意思を聞ける場面では、分かりやすく説明して希望を尋ねてください。
申立てができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族等です。子が申立人になることと、親の財産を代理できることは別です。本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。施設に移り、住民票と実際の生活場所が違う場合は、その事情を裁判所へ伝え、申立先を確認してください。
制度の選び方や必要な支援は、地域の中核機関、地域包括支援センター等へ相談してください。申立ての受付・書式は、家庭裁判所へ尋ねましょう。申立てる親族がいない等の事情は、市区町村へ伝え、市町村長申立てを相談してください。裁判所:後見開始の申立資格・申立先
ここまでできたら:本人が必要とする支援、申立人の資格、提出先の裁判所と連絡先を記録できた。
STEP 2 本人の証明、診断書、財産資料を取得する
裁判所の最新チェックリストを先に取り、発行期限のある書類は、提出予定から逆算して取得してください。本人情報シートの作成は、日ごろ支援する福祉関係者等へ相談しましょう。家族の説明メモと本人情報シートは、別の資料です。
| 書類・資料 | 取得・作成する先 | 確認すること |
|---|---|---|
| 本人の戸籍、住民票・戸籍附票等 | 市区町村の戸籍・住民票窓口 | 裁判所案内では通常、発行から3か月以内。個人番号を記載しない |
| 診断書、本人情報シートの写し | 所定様式を使う医師、本人を支える福祉関係者等 | 診断書は通常、作成から3か月以内。受診予約と作成料も聞く |
| 登記されていないことの証明書 | 法務局・地方法務局の本局等。郵送は東京法務局 | 証明事項を提出先に確認。すでに後見等の利用がある場合も伝える |
| 預金・不動産・収入・支出・負債の資料 | 金融機関、法務局、年金通知、施設・税の通知等 | 通帳残高だけでなく、借入・家族の立替・共有財産も分ける |
| 候補者に関する住民票等 | 候補者の住所地の市区町村等 | 候補者を挙げても、その人が選ばれる保証はない |
法務局の窓口・郵送での「登記されていないことの証明書」は1通300円です。本人の子が請求する場合も本人確認と親族関係の証明が必要です。診断書料、戸籍等の費用、返送料は別に見積もります。法務局:証明書の請求者・方法・手数料
ここまでできたら:必要書類ごとに取得先・発行日・不足の有無を記録し、揃わない書類は裁判所へ相談した。
STEP 3 公式様式に、必要な支援と財産の全体を記入する
後見開始の申立書・財産目録・収支予定表・記載例を開き、申立先の独自様式や追加資料の有無を確認してください。申立事情説明書、親族関係図、候補者事情説明書なども一緒に調べましょう。
収支は本人分と家族分を分けて記入してください。年金などの年額と月額が混ざっていたら、区別しましょう。本人のお金を誰へ、何のために支払うかが分かるようにします。不明な残高は0円とせず、「確認中」と記して相談してください。
保佐の代理権付与や、本人以外からの補助開始・権限付与には、本人の同意が関係します。相談前に、必要な行為と、本人の理解・希望を整理してください。類型を選ぶ際は、診断名に加えてこれらの事情も伝えましょう。裁判所:後見・保佐・補助開始の説明
ここまでできたら:使う様式、申立ての目的、必要な権限、財産・収支の記載と根拠資料が対応している。
STEP 4 家庭裁判所へ提出し、費用と受付を確認する
申立書一式の写しを残し、裁判所へ提出してください。提出前に、窓口・郵送の受付方法、面談予約の要否、納付方法を尋ねましょう。スマートフォンで書類が読めても、その手続きにオンライン提出が用意されているとは限りません。利用できる提出方法は、申立先の案内で確認してください。
後見開始の申立ての収入印紙は800円、登記手数料は2,600円です。郵便料等は裁判所により異なり、鑑定が必要な場合は別に費用がかかります。複数の申立てを同時に行う場合の印紙額も窓口に確認してください。専門職の依頼費用や、選任後の報酬はこの申立費用に含まれません。
郵送する場合は、指定の宛先へ送り、控えに発送日を記入してください。書類の到着と、申立内容が認められることは別です。事件番号、連絡方法、次の予定を裁判所へ確認しましょう。
ここまでできたら:提出控え、受付情報、納付内容、裁判所からの次の連絡先を保存した。
STEP 5 照会・面談・不足書類の補正に対応する
裁判所から質問が届いたら、回答期限、質問の対象、必要な根拠資料を分けて読んでください。親族間の意見の違い、本人が受診を嫌がる事情、資料が入手できない理由も伝えましょう。本人情報シートや診断書が揃わない場合は、申立ての方法を裁判所へ相談してください。
本人への調査や鑑定など、追加の確認・費用が必要になる場合があります。書類がある場合と同じ進み方になるとは限りません。提出できる代わりの資料、回答期限、支払いを急ぐ事情の伝え方を裁判所へ尋ねてください。
申立てを取り下げるには、家庭裁判所の許可が必要です。希望する候補者が選任されそうにない場合も、自動的に取り下げられるものではありません。
ここまでできたら:裁判所の照会ごとに回答・再提出の日を残し、未解決の点と次の指示を把握した。
STEP 6 審判の確定と登記、支援開始の範囲を確認する
家庭裁判所の判断を記した審判書が届いたら、始まる制度が後見・保佐・補助のどれか、選ばれた人は誰かを確認してください。保佐・補助の場合は、認められた権限の範囲も読みましょう。審判書の日付、届いた日、確定した日は区別し、確定日は裁判所の通知や案内で確認してください。選ばれた人に不満があるだけでは、不服申立てはできません。
選任された人は、登記の完了と登記事項証明書の取得方法を確認し、必要な金融機関等へ権限を示す資料を提出します。家族全員に代理権が付くものではありません。最初の財産目録・収支予定表を報告する時期も、裁判所の案内に従って確認します。
実家の売却など居住用不動産の処分が必要なら、開始審判とは別に居住用不動産の処分許可を確認してください。きっかけの用事が終わっても、後見等が当然に終わる制度ではありません。この点も家族で共有しましょう。
ここまでできたら:審判の確定、権限の範囲、登記の確認、最初の報告と本人への支援予定が分かった。
制度の詳しい条件・図解・よくある質問を読む
成年後見の申立ては、書類を集める前に「本人が何に困り、どの支援が必要か」を整理するところから始めます。預金の管理、施設の契約、相続など、目的を書き出して地域の相談窓口につなぎましょう。
現行制度の後見・保佐・補助は、本人の判断能力や必要な支援によって使い方が異なります。家族の都合と、本人に必要な権限を分けて相談してください。本人ができること、支援があればできることも伝えましょう。
図解:書類がないときも相談

図解の内容を文章で読む
- 不足を整理:何が用意できないかを書き出す
- 理由をまとめる:本人の拒否や依頼先の状況を記録
- 手元の資料:受診情報と生活状況を整理
- 申立先へ相談:不足資料の扱いと必要費用を確認
相談準備の順序例。添付なしの申立ては事情に応じ確認。
申立先は本人の住所地の家庭裁判所
後見開始を申し立てられるのは、本人、配偶者、四親等内の親族などです。子が遠方に住んでいても、原則として本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。裁判所は、申立人の住む場所を基準に選ぶものではありません。裁判所「後見開始」
本人の住民票の住所と現在の施設所在地が違う場合は、準備前に管轄を確認してください。家族がおらず申立てを担う人がいないときは、市町村長による申立てを自治体に相談できます。
まず困りごとと本人の希望を短く書く
たとえば「母の入居先を決めたい」だけでは、何の支援が必要か分かりません。「母は今の地域で暮らしたいと話している。施設の説明を理解するのが難しく、契約を進められない」と書くと、本人の希望と手続上の問題を分けて伝えられます。これは説明のための架空例です。
本人に必要な支援は、自治体の中核機関、地域包括支援センター、社会福祉協議会などへ相談してください。成年後見以外の支援で対応できるかも含めて検討しましょう。厚生労働省「ご本人・家族・地域のみなさまへ」
相談準備には地域包括支援センター相談チェックリストも使えます。
書類は四つのまとまりで用意する
次の表を使って、準備する書類を整理してください。最終的な提出物は、申立先の最新の手引とチェックリストに合わせましょう。
| まとまり | 主な資料 | 準備時の注意 |
|---|---|---|
| 本人や候補者の情報 | 戸籍、住民票等、登記されていないことの証明書 | 発行期限、必要な証明事項を確認 |
| 判断能力・暮らし | 所定の診断書、本人情報シート、介護等の資料 | 診断書と日常の状況の資料を区別 |
| 財産と収支 | 通帳、年金通知、施設費、負債等の資料 | 分からない財産を勝手にゼロとしない |
| 申立ての説明 | 申立書、事情説明書、親族関係図、財産目録等 | 支援を求める目的を具体的に記載 |
本人情報シートは、本人の身近で職務上支援しているケアマネジャー、相談員等が作成することを想定した資料です。担当者に相談し、医師へ伝える日常の状況を整理してください。家族のメモも参考になりますが、所定の資料をそのまま置き換えるものではありません。
通帳が見当たらない、本人が資料の提示を嫌がる、家族間で情報を共有できない場合は、その事情を先に相談してください。不足した情報を数字で埋める代わりに、「未確認」と理由を記しましょう。次に必要な調査を整理しやすくなります。
提出前に費用と書類の期限を確認する
後見開始では申立手数料・登記手数料のほか、郵便料、診断書料等が必要です。専門家への依頼費や鑑定費用は別に検討します。負担が難しい場合は、支払いを始める前に自治体の助成や法テラスの利用を相談しましょう。
戸籍や診断書等には、発行から3か月以内などの条件があります。提出時に期限を過ぎないよう、受診、資料収集、提出の予定を並べてください。コピーの可否、郵便料の内訳、追加の地域書式は、裁判所の後見ポータルから申立先の案内で確認してください。
提出後は面接・調査や鑑定を経て判断される
裁判所は、提出資料だけでなく、本人、申立人、候補者等から事情を聴くことがあります。必要な場合には鑑定も行います。書類の不足や事案の内容によって進み方が変わるため、契約の期限がある場合は相談時に日付を伝えてください。
裁判所は、本人にふさわしい後見人を選任します。希望する家族を候補者として記入しても、必ずその人が選ばれるとは限りません。専門職や監督人が選任される場合もあります。誰が選ばれたかという点について、不服申立てはできません。東京家庭裁判所「後見・保佐・補助開始申立ての手引」
申立てを取り下げるには、家庭裁判所の許可が必要
後見等開始の申立てを提出した後は、審判前でも取下げに家庭裁判所の許可が必要です。「予想外の費用がかかる」「家族が候補者に選ばれそうにない」という理由で、自由にキャンセルできる手続ではありません。
また、開始後に当初の用事が終わったことと、後見等が終了することは別です。申立て前に、権限、報告の負担、継続費用まで説明を受けてください。費用は成年後見の費用と報酬に整理しています。
診断書や本人情報シートが用意できないとき
本人情報シートを用意できない場合は、申立先へ相談してください。裁判所の作成手引は、提出が難しい場合、シートを添付せずに後見等開始の申立てをすることも可能としています。担当ケアマネジャーがいない場合も、相談を続けられます。一方、シートは診断の補助資料として提供することが望ましいと説明しています。裁判所「本人情報シートの位置付け」
本人や親族が本人情報シートを作成することは、想定されていません。家族は、申立書等で生活状況を説明してください。作成者が見つからない事情と、代わりに提出できる資料も裁判所へ相談しましょう。これまで関わった病院・福祉窓口、誰に作成を依頼して難しかったかを整理して伝えると、次の相談につながります。
本人が診断を拒むなど、診断書の作成・提出自体が難しい場合もあります。裁判所の診断書作成手引は、そうした事情がある場合、診断書の添付なしの申立ても可能としています。その場合、多くのケースでは申立人が鑑定費用を一時的に負担して手続きを進めると説明しています。裁判所「診断書の位置付け」
診断書を作成できない場合は、理由、本人の状態、既存の受診情報等を申立先へ伝えてください。必要な資料と費用を尋ねましょう。添付なしでの申立てが可能な場合も、診断書が不要な制度ということではありません。本人を無理に受診させる方法を考える前に、相談してください。
本人の判断能力をもとに、後見・保佐・補助を判断する
家庭裁判所は、医師の診断書等を参考に、本人の判断能力を判断します。認知症という診断名だけで、後見・保佐・補助の類型が決まるものではありません。受診時には、お金の管理が難しい場面と、説明を短くしたり時間をかけたりすれば理解できる場面の両方を伝えましょう。
例:通帳の管理は難しいが、暮らしの希望は話せる場合
父は同じ支払いを何度もしたか分からなくなっていますが、通院先や住みたい場所の希望は話せます。家族は「全部できない」とまとめず、「請求書を一緒に見ると金額を理解できた」「複数の契約を同時に説明すると混乱した」など、日時と支援方法を記録します。これは架空の例で、記録だけで特定の類型になるという意味ではありません。
提出直前に確認する三つのこと
一つ目は、書式の版と書類の発行日です。申立先の現在の案内を開き直し、保存済みの様式が古くなっていないか確かめてください。書類を取り寄せた日と、証明書に書かれた発行日は区別しましょう。
二つ目は、添付資料の個人番号です。裁判所は、マイナンバーが記載された書類を提出しないよう案内しています。住民票を取るときは、個人番号の記載を不要としてください。収支資料等も、提出前に見直しましょう。裁判所「後見開始」
三つ目は、提出した資料の控えです。何をいつ提出したかが分かるよう、一覧とコピーを残してください。追加資料を求められたときも、既に出した内容との違いを説明できるようにしましょう。
裁判所への問い合わせメモ
本人の住所と現在の居場所:___
用意できない資料と理由:___
代わりに手元にある資料:___
急ぐ手続きと期限:___
確認したいこと:提出方法/不足資料の扱い/必要費用
回答した担当窓口・相談日・次の作業:___
このメモは、裁判所へ具体的な事情を伝えるために使ってください。書類が不足したままの受付や、希望日の審判を約束するものではありません。「どの支援方法が本人に合うか」という法律・生活の相談は、地域窓口や専門家へ尋ねましょう。裁判所には、「どの書式をどう提出するか」を尋ねてください。質問の内容を分けると、確認が進みます。裁判所「外部機関の相談窓口」
よくある疑問
親族全員の了解がなければ申し立てられませんか?
親族全員の同意は、一律の申立要件ではありません。裁判所が親族の意見を確認することはあります。対立がある場合は、その事情も伝えてください。
裁判所で、成年後見を使うべきかも決めてもらえますか?
手続案内と、生活上どの支援を使うかの相談は役割が異なります。最初は地域の相談窓口で支援方法を整理し、裁判所には書式や提出方法を確認すると進めやすくなります。
本稿は2026年10月1日時点の現行制度の手順です。成立済みの改正法を、施行前から現行の申立てに当てはめないでください。法務省の案内/2026年改正と施行の区別
今回追加した手順の公式資料(確認日:2026年10月5日)

