親が亡くなった後に税務署へ出す可能性があるのは、相続税の申告だけではありません。親に年金、給与、不動産収入、事業所得、株式や不動産の売却益などがあった場合は、相続人が親に代わって所得税の「準確定申告」を行います。
期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。相続税の10か月より早く、相続放棄を検討する3か月の期限とも近いため、死亡後の手続きの中で埋もれやすい期限です。
ただし、亡くなった人全員に準確定申告が必要なわけではありません。この記事では、申告が必要かを確認する順番、集める書類、医療費控除の注意点、相続人が複数いる場合の提出方法を整理します。所得の種類が多い、事業や不動産の収入がある、前年分の申告が残っている場合は、早めに税務署または税理士へ確認してください。
- 準確定申告は亡くなった人の所得税を精算する手続き
- 期限は相続を知った日の翌日から4か月以内
- 1月から確定申告期限までに亡くなった場合は前年分も確認する
- 最初に申告が必要かを確認する
- 年金収入が中心でも還付申告になることがある
- 給与・事業・不動産・売却所得は資料を分けて集める
- 必要書類は所得資料・控除資料・相続人資料に分ける
- 医療費控除は誰がいつ支払ったかで分ける
- 社会保険料・生命保険料などは死亡日までの支払いを確認する
- 相続人が複数いる場合は付表と代表者を確認する
- 提出先は亡くなった人の死亡時の納税地
- 紙提出とe-Taxでは準備する書類が異なる
- 納税と還付の扱いを申告前に決めておく
- 4か月から逆算して準備する
- 準確定申告の確認チェックリスト
- よくある質問
- まとめ
準確定申告は亡くなった人の所得税を精算する手続き
通常の確定申告は、本人が1月1日から12月31日までの所得と税額を計算します。年の途中で亡くなった場合は、相続人や包括受遺者が、1月1日から死亡日までに確定した所得と税額を計算して申告します。これが準確定申告です。
| 手続き | 対象 | 原則の期限 | 提出先 |
|---|---|---|---|
| 準確定申告 | 亡くなった人の所得税 | 相続を知った日の翌日から4か月以内 | 亡くなった人の死亡時の納税地を管轄する税務署 |
| 相続放棄 | 財産と債務を相続するか | 相続開始を知った時から3か月以内 | 亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 相続税申告 | 相続した財産にかかる税 | 相続開始を知った日の翌日から10か月以内 | 亡くなった人の死亡時の住所地を管轄する税務署 |
準確定申告と相続税申告は、計算する税金も期限も別です。相続税の要否は相続税がかかるか確認する方法で整理しています。
期限は相続を知った日の翌日から4か月以内
通常は、家族が死亡を知った日の翌日から4か月以内が申告・納付期限です。たとえば6月20日に亡くなり、その日に相続人が死亡を知った場合は、原則として10月20日までに申告します。期限日が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、その翌日が期限になります。
国税庁の納税者が死亡したときの確定申告でも、4か月の期限と提出方法を確認できます。申告だけでなく納税も同じ期限です。税額が出そうな場合は、申告書の作成と並行して納税資金を確認します。
1月から確定申告期限までに亡くなった場合は前年分も確認する
親が1月1日から通常の確定申告期限までの間に亡くなり、前年分の確定申告をまだ提出していなかった場合は、前年分と死亡した年分の両方を確認します。確定申告義務があれば、いずれも相続の開始を知った日の翌日から4か月以内が準確定申告の期限です。
前年分の源泉徴収票や帳簿を「もう古い年度だから」と片付けないでください。前年分と死亡年分で申告書が分かれ、所得・控除の資料も年ごとに仕分ける必要があります。
最初に申告が必要かを確認する
準確定申告が必要かどうかは、亡くなった人が生きていればその年に確定申告をする必要があったかを基準に判断します。収入の金額だけでなく、所得の種類、源泉徴収、必要経費、各種控除を確認します。
| 主な状況 | 確認の方向 | 集める資料 |
|---|---|---|
| 公的年金が中心 | 年金収入400万円以下・年金以外の所得20万円以下など、申告不要制度の条件を確認 | 公的年金等の源泉徴収票、その他所得の資料 |
| 給与を受けていた | 年末調整の有無、2か所給与、給与以外の所得を確認 | 勤務先ごとの源泉徴収票 |
| 個人事業・不動産賃貸 | 収入、必要経費、青色申告の状況を確認 | 帳簿、請求書、領収書、通帳、前年申告書 |
| 株式・投資信託の売却 | 口座区分、損益、繰越損失を確認 | 年間取引報告書、取引明細 |
| 土地や建物を売却 | 取得費、譲渡費用、特例の適用を確認 | 売買契約書、購入時資料、仲介手数料など |
| 源泉徴収税・予定納税が多い | 申告義務がなくても還付になる可能性を確認 | 源泉徴収票、予定納税通知、控除証明書 |
「年金だけだったから不要」と即断せず、源泉徴収票と他の所得を確認します。判断できない場合は、資料をそろえて亡くなった人の所轄税務署へ問い合わせる方が確実です。
年金収入が中心でも還付申告になることがある
公的年金等の収入金額が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象となり、公的年金等以外の所得金額が20万円以下なら、所得税の確定申告が不要となる制度があります。外国年金など源泉徴収の対象とならない年金が含まれる場合は、扱いが異なります。
申告義務がなくても、年金から所得税が源泉徴収され、医療費控除や生命保険料控除などを反映すると還付を受けられる場合があります。国税庁の確定申告が必要な方にある年金所得者の申告不要制度を確認し、申告不要と還付の有無を分けて判断してください。
給与・事業・不動産・売却所得は資料を分けて集める
死亡した年に給与を受けていた場合は、勤務先へ源泉徴収票の発行時期を確認します。年末調整が済んでいない、2か所以上から給与がある、給与以外の所得がある場合は、申告が必要になる可能性があります。
個人事業や賃貸不動産がある場合は、死亡日までの売上・家賃と必要経費を集計します。株式や不動産を売却していた場合は、入金額だけでなく取得費や売却費用も確認します。通帳だけでは取引内容が分からないため、前年の申告書、帳簿、証券会社の報告書、売買契約書をまとめます。
必要書類は所得資料・控除資料・相続人資料に分ける
| 区分 | 主な書類 | 確認先 |
|---|---|---|
| 基本資料 | 前年の確定申告書控え、死亡日が分かる資料、親のマイナンバー資料 | 自宅、税理士、自治体 |
| 収入・所得 | 年金・給与の源泉徴収票、帳簿、決算書、支払調書、年間取引報告書 | 年金機構、勤務先、取引先、証券会社 |
| 必要経費 | 請求書、領収書、通帳、カード明細、固定資産関係資料 | 自宅、金融機関、取引先 |
| 所得控除 | 医療費資料、社会保険料・生命保険料・地震保険料の控除証明書 | 医療機関、保険者、保険会社 |
| 相続人関係 | 相続人の氏名・住所・続柄・マイナンバー、本人確認資料 | 相続人、戸籍関係資料 |
| 提出書類 | 準確定申告書、確定申告書付表、必要な明細書や計算書 | 国税庁、税務署 |
相続人を確定する戸籍の集め方は、相続の戸籍集めと法定相続情報一覧図も参考にしてください。申告内容によって追加資料が必要になるため、前年の申告書控えがあれば最初に確認します。
医療費控除は誰がいつ支払ったかで分ける
亡くなった人の準確定申告で医療費控除の対象になるのは、原則として死亡日までに亡くなった人が支払った医療費です。死亡後に相続人が支払った入院費などを、亡くなった人の準確定申告へそのまま入れることはできません。
死亡後に相続人が支払った医療費は、その相続人と亡くなった人が生計を一にしていたかなどによって、相続人自身の医療費控除の対象となる可能性があります。また、死亡時に未払いだった医療費は、相続税の計算では債務として扱える場合があります。同じ領収書でも所得税と相続税で確認点が違うため、支払日・支払者・金額を記録してください。
社会保険料・生命保険料などは死亡日までの支払いを確認する
社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除は、原則として死亡日までに亡くなった人が支払った金額を確認します。年額の証明書が届いていても、死亡後の支払いを混ぜないようにします。
配偶者控除や扶養控除などの対象になるかは、死亡日の現況で判定します。親族関係や合計所得金額の見積りも必要です。控除ごとに条件が違うため、前年の申告内容をそのまま写さず、死亡した年の状況で確認してください。
相続人が複数いる場合は付表と代表者を確認する
準確定申告書には、相続人や包括受遺者の氏名、住所、続柄などを記載した「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」を添付します。相続人が2人以上いる場合は、原則として各相続人が連署して提出します。ほかの相続人の氏名を付記し、各人が別々に提出することもできますが、提出した相続人は、ほかの相続人へ申告内容を通知しなければなりません。別々に提出するときも、提出前に所得、控除、納税額または還付額の計算根拠と申告書の写しを共有してください。
還付金を相続人の代表者がまとめて受け取る場合は、付表とは別に委任状が必要です。相続人同士で連絡が取りにくい、相続放棄を検討している人がいる、相続人の範囲に争いがある場合は、書類へ署名する前に税務署や専門家へ相談してください。相続放棄には原則3か月の期限があります。
提出先は亡くなった人の死亡時の納税地
準確定申告書の提出先は、相続人の住所地ではありません。亡くなった人の死亡時の納税地を管轄する税務署です。通常は死亡時の住所地が納税地ですが、事業所などを納税地として届け出ていた場合もあるため、前年の確定申告書控えで提出先を確認します。
管轄が分からない場合は、国税庁の税務署の所在地などを知りたい方から確認できます。郵送する場合は、期限直前ではなく余裕を持って発送し、控えと提出記録を残します。
紙提出とe-Taxでは準備する書類が異なる
準確定申告は紙だけでなくe-Taxでも提出できます。ただし、国税庁の確定申告書等作成コーナーでは準確定申告書を作成できません。e-Taxソフトなどを利用します。
e-Taxでは、相続人が1人でも準確定申告書と付表をXML形式で提出します。相続人が2人以上いる場合は、各相続人が内容を確認して署名した「準確定申告の確認書」をPDFで送信します。代表者が他の相続人の還付金を受け取る場合は委任状も必要です。国税庁の準確定申告のe-Tax対応で最新の提出書類を確認してください。
納税と還付の扱いを申告前に決めておく
計算の結果、所得税が発生する場合は、申告期限までに納付します。親の口座が凍結されていると、納税資金をすぐに動かせないことがあります。相続人間で誰が立て替えるか、後でどのように精算するかを記録しておきます。
還付になる場合は、相続人ごとの還付額と受取口座を付表で確認します。代表者が一括受領する場合は委任状が必要です。還付金も相続に関係する財産として扱われるため、受取後の分配を曖昧にしないでください。
4か月から逆算して準備する
- 死亡直後:前年の申告書、通帳、年金・給与・事業資料を確保する
- 2週間以内:所得の種類、所轄税務署、関与していた税理士を確認する
- 1か月以内:相続人を確認し、源泉徴収票や控除証明書を請求する
- 2か月以内:収入・経費・控除を集計し、申告要否と還付の可能性を判断する
- 3か月以内:付表、確認書、委任状の要否を相続人間で確認する
- 4か月以内:申告書を提出し、税額があれば納付する
相続人調査、相続放棄、葬儀後の名義変更と時期が重なります。全体の優先順位は親が亡くなったときの手続き期限一覧で確認してください。
準確定申告の確認チェックリスト
- 死亡日と、相続を知った日を記録した
- 4か月の申告・納付期限をカレンダーに入れた
- 前年分の申告が済んでいるか確認した
- 前年の確定申告書控えを探した
- 年金・給与・事業・不動産・売却所得を確認した
- 源泉徴収票、帳簿、取引報告書を集めた
- 医療費を死亡日前後、支払者ごとに分けた
- 死亡日までに支払った保険料などを確認した
- 相続人の範囲と連絡先を確認した
- 付表、確認書、委任状の要否を確認した
- 亡くなった人の死亡時の納税地を確認した
- 納税資金または還付金の受取方法を決めた
よくある質問
年金だけなら準確定申告は不要ですか
必ず不要とは限りません。公的年金等の収入金額、年金以外の所得、年金が源泉徴収の対象かを確認します。申告不要制度に該当しても、源泉徴収税額や予定納税額があり、控除を反映すると還付になる場合があります。
相続税を申告しない家庭でも準確定申告は必要ですか
必要になることがあります。相続税は遺産額、準確定申告は亡くなった人の所得を基準に判断する別の手続きです。遺産が相続税の基礎控除以下でも、事業所得や不動産所得、売却益などがあれば準確定申告を確認します。
4か月以内に資料がそろわない場合はどうしますか
資料不足だけで期限が自動的に延びるわけではありません。分かっている所得や不足資料を整理し、期限前に所轄税務署または税理士へ相談してください。前年の申告内容、通帳、源泉徴収票など、手元にある資料だけでも早めに持参します。
制度内容の確認日:2026年8月29日。準確定申告の期限、付表、別々に提出する場合の通知、還付金受領の委任状、e-Taxの必要書類は、国税庁の最新様式と死亡時の納税地を管轄する税務署で確認してください。
まとめ
準確定申告は、相続人が亡くなった人の1月1日から死亡日までの所得税を精算する手続きです。原則の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。相続税の10か月期限とは別に進みます。
最初に年金、給与、事業、不動産、売却所得と前年分の申告状況を確認します。その後、源泉徴収票、帳簿、控除証明書、相続人資料を集め、付表や委任状の要否を整理してください。医療費は死亡日前後と支払者で扱いが変わります。4か月ぎりぎりまで待たず、申告要否が曖昧な段階で所轄税務署へ確認するのが安全です。


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