親が亡くなった後に自動車が残ったら、最初に車検証の「所有者」と「使用者」を確認します。親が普段乗っていた車でも、所有者が販売店やローン会社なら、相続人だけで名義変更、売却、廃車を進めることはできません。
所有者が親本人なら、車は相続財産です。誰が引き継ぐかを相続人の間で決め、普通車は運輸支局など、軽自動車は軽自動車検査協会で手続きします。売却や廃車を希望していても、相続関係を確認できる書類が必要になる場合があります。
この記事では、2026年8月時点の公的案内を基に、普通車と軽自動車の違い、必要書類、車庫証明、売却・廃車、車検と保険、税金、相続放棄中の注意まで順番に整理します。個別の必要書類は車検証の記載や相続方法で変わるため、申請先へ事前確認してください。
最初に車検証の所有者と使用者を確認する
| 確認する欄 | 見るポイント | 次の行動 |
|---|---|---|
| 所有者 | 親本人か、販売店・ローン会社か | 処分できる人を確認 |
| 使用者 | 実際に車を使っていた人 | 所有者と同じとは限らない |
| 使用の本拠 | 主に車を使う場所 | 車庫証明や管轄を確認 |
| 有効期間の満了日 | 車検が切れていないか | 期限切れなら公道を走らない |
| 登録番号・車台番号 | ナンバーと固有番号 | 問い合わせ時に控える |
電子車検証は券面だけで確認できない情報があります。車検証閲覧アプリまたは「自動車検査証記録事項」も確認してください。鍵、自賠責保険証明書、任意保険証券、納税通知書、整備記録簿、ローン契約書も一か所に集めます。
死亡後の手続き全体に車の連絡先と期限を追加する場合は、親が亡くなったときの手続き期限一覧も確認してください。
車は相続財産として分け方を決める
親本人が所有する車は、預貯金や不動産と同じく遺産分割の対象です。遺言書があるかを確認し、ない場合は相続人の間で、誰が車を取得するか、売却代金をどう分けるか、廃車費用を誰が負担するかを話し合います。
車だけを先に分けることもありますが、口頭の合意で進めると後で認識がずれるおそれがあります。登録手続きに必要な形式を申請先へ確認したうえで、遺産分割協議書の作り方と必要書類を参考に、合意内容を記録してください。
普通車と軽自動車では窓口と書類が違う
| 項目 | 普通車 | 軽自動車 |
|---|---|---|
| 主な窓口 | 運輸支局・自動車検査登録事務所 | 軽自動車検査協会 |
| 手続き | 相続による移転登録 | 自動車検査証の記録事項変更 |
| 相続確認 | 遺産分割協議書など、相続方法に応じた書類 | 死亡と新所有者が相続人であることを確認できる戸籍等 |
| 印鑑証明 | 新所有者分などを求められる | 住所を証する書面として住民票等を使用 |
| 車庫関係 | 使用の本拠が変わる場合などに車庫証明 | 地域により保管場所届出 |
軽自動車検査協会の名義変更の公式案内では、相続の場合、所有者が亡くなった事実と、新しい所有者が相続人であることを確認できる戸籍謄本等または法定相続情報一覧図を挙げています。死亡診断書は原則使えないと案内されている点にも注意が必要です。
引き継ぐ・売る・廃車の方針を決める
手続きの前に、車を誰かが使うのか、買取店などへ売るのか、廃車にするのかを決めます。まだ決められない場合は、無保険運転や盗難を防ぐため、鍵と書類を管理する人を一人決め、駐車場料金や保険料など維持費も記録します。
- 引き継ぐ:取得する相続人、新しい使用場所、保険条件を決める
- 売却する:査定額、名義変更の担当、代金の受取先を確認する
- 廃車にする:解体か一時使用中止か、還付の有無を確認する
- 保留する:鍵、車検証、駐車場所、費用負担を記録する
車の価値よりローン残債や修理費の方が大きい場合もあります。相続財産と債務を確認する前に結論を急がないでください。
ローン会社や販売店名義なら先に連絡する
車検証の所有者がローン会社や販売店の場合は、「所有権留保」の可能性があります。親が使用者でも、相続人の判断だけで売却や廃車はできません。ローンの残高、完済済みか、所有権解除に必要な書類、死亡時の返済方法を契約先へ確認します。
国土交通省の運輸支局は、車検証の所有者と使用者が異なる場合があり、所有者が別名義なら勝手に売れないと案内しています。軽自動車検査協会も、所有者が販売店やローン会社なら、記録変更や返納について事前に所有者の同意を得るよう求めています。
故人の口座からローンが引き落とされていた場合は、親が亡くなった後の銀行口座手続きも確認し、引落停止後の支払方法を契約先に尋ねます。
普通車を相続人名義にする手続き
普通車の所有者を親から相続人へ変える手続きは、相続による移転登録です。新しい使用の本拠を管轄する運輸支局または自動車検査登録事務所で行います。国土交通省の名義変更時の手続き案内は、所有者の名義が変わった場合に移転登録を行うよう求めています。
登録内容を放置すると、税金やリコールの重要な通知が届かないおそれがあります。戸籍の収集や遺産分割に時間がかかる場合も、早めに管轄窓口へ相談し、現在の相続状況で必要な書類を確認してください。
普通車の移転登録は所有者変更から15日以内が原則
道路運送車両法第13条は、登録自動車の所有者に変更があったとき、新しい所有者が、その事由があった日から15日以内に移転登録を申請するよう定めています。車検証の所有者が亡くなった場合も、国土交通省北海道運輸局の案内では、相続人への移転登録を省略できないとしています。
相続人が複数いる場合は、遺産分割や戸籍収集に時間がかかり、必要書類が15日以内にそろわないことがあります。15日以内なら不完全な書類を提出してよいという意味ではありません。死亡を知ったら、車検証の所有者、相続人、車を取得する人、車検の有効期間を確認し、期限内の申請が難しい場合は管轄の運輸支局または自動車検査登録事務所へ早めに相談してください。相談日、担当窓口、案内された必要書類を記録します。
この15日以内という説明は、道路運送車両法上の登録自動車である普通車の移転登録についてです。軽自動車は制度と窓口が異なるため、軽自動車検査協会の案内に従ってください。
普通車の必要書類をそろえる
| 書類・物 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自動車検査証 | 車両と登録内容の確認 | 電子車検証は記録事項も用意 |
| 戸籍・除籍等 | 死亡と相続関係の確認 | 相続人全員が確認できる範囲 |
| 法定相続情報一覧図 | 戸籍一式の代用 | 利用できる手続き範囲を確認 |
| 遺産分割協議書等 | 車の取得者を確認 | 遺言・単独相続などで変わる |
| 新所有者の印鑑証明書 | 本人と実印の確認 | 発行期限を申請先に確認 |
| 車庫証明 | 新しい保管場所の確認 | 必要な地域・事例のみ |
| 申請書・手数料納付書 | 移転登録の申請 | 窓口の記載例で確認 |
| ナンバープレート | 管轄変更時の交換 | 車の持込みが必要な場合あり |
相続の形が、遺産分割、遺言、調停・審判、共同相続のどれに当たるかで書類は変わります。戸籍を何度も提出する負担を減らしたい場合は、法定相続情報一覧図と戸籍の集め方も参考にしてください。
100万円以下なら申立書を使える場合がある
相続する普通車の価格が100万円以下で、相続人間の遺産分割協議が成立している場合は、自動車登録手続き専用の「遺産分割協議成立申立書」を利用できる場合があります。国土交通省関東運輸局の単独相続の案内では、100万円以下であることを確認できる査定証または査定価格資料を求めています。
これは「車の価値が低ければ相続人の話合いが不要」という制度ではありません。協議が成立していることが前提で、価格を確認できる資料も必要です。使える条件や書式は、申請先の運輸支局へ確認してください。
軽自動車を相続人名義にする手続き
軽自動車は、新しい使用者が車を使う場所を管轄する軽自動車検査協会の事務所・支所・分室で名義変更します。一般に、車検証原本、新しい使用者の住所を証する書面、申請書、相続を確認する戸籍等が必要です。代理人が行う場合は申請依頼書も確認します。
軽自動車の名義変更手数料は、軽自動車検査協会の案内では無料です。ただし、ナンバープレート代、住民票等の取得費、地域で必要になる保管場所届出など、別の費用が生じることがあります。
普通車用の遺産分割協議成立申立書を、そのまま軽自動車に使うと決めつけないでください。車検証の所有者・使用者、新旧住所、ナンバーの管轄によって必要物が変わるため、協会の手続きナビまたはコールセンターで確認します。
車庫証明とナンバー変更を確認する
普通車の移転登録で使用の本拠も変わる場合は、車庫証明が必要になることがあります。警察庁の自動車の保管場所証明申請では、移転登録に使用の本拠の変更を伴う場合、運輸支局等へ保管場所証明書を提出すると案内しています。証明不要地域もあるため、管轄警察署へ確認してください。
運輸支局や軽自動車検査協会の管轄が変わると、ナンバープレートの交換が必要になる場合があります。普通車は後部ナンバーの封印があるため、車の持込みや出張封印の利用可否を事前に確認します。軽自動車も管轄変更時はナンバー代がかかることがあります。
売却する場合も先に相続関係を整理する
親の車を売る場合、買取業者が相続による名義変更と売却手続きを一緒に代行することがあります。ただし、相続人の一人が独断で売れるわけではありません。誰が車を取得して売るのか、売却代金をどう扱うのかを決めます。
- 査定は複数社で取り、査定日と有効期限を記録する
- 名義変更を誰が行い、完了を何で確認するか決める
- 自動車税、自賠責、リサイクル料金の扱いを確認する
- 売却代金は相続財産として入金先と分配を記録する
- 車内、ナビ、ドライブレコーダーの個人情報を消去する
買取業者へ原本を渡す前に、車検証や相続書類の控え、委任内容、車両引渡証、名義変更期限を残します。後日、登録事項等証明書や業者の完了書類で名義が変わったことを確認すると安心です。
廃車にする場合は一時抹消と永久抹消を区別する
普通車をしばらく使わない場合は一時抹消登録、解体して再使用しない場合は永久抹消登録が基本です。軽自動車では、自動車検査証返納届による一時使用中止と、解体返納・解体届出があります。
廃車業者へ任せる場合も、「廃車にした」と口頭で聞くだけで終わらせず、解体報告、抹消または返納の完了書類、ナンバープレート、還付金の受取先、費用を確認します。所有者がローン会社等なら、その同意なしに返納を進めないでください。
車検・自賠責・任意保険を確認する
名義変更が済んでいなくても、誰でも当然に運転できるわけではありません。車検の有効期間、自賠責保険の期間、任意保険の記名被保険者、運転者限定、年齢条件、使用目的を確認し、保険会社へ契約者死亡を連絡します。
日本損害保険協会の自賠責保険の案内では、車の譲渡や契約者住所、ナンバーなど証明書の記載事項が変わったときは、遅滞なく引受保険会社へ通知するよう案内しています。自賠責は相手の人身損害を対象とする最低限の保険で、車両損害や十分な対人・対物補償までカバーする任意保険とは別です。
車検切れの車を公道で走らせず、必要なら積載車などを利用します。保険会社から補償開始の確認を得る前に「家族だから大丈夫」と運転しないでください。
自動車税と相続税の扱いを確認する
普通車の自動車税種別割は都道府県、軽自動車税種別割は市区町村が窓口です。軽自動車検査協会の軽自動車税の案内では、4月1日までに廃車や名義変更が済んでいない場合、4月1日時点の納税義務者へ市区町村から通知されると説明しています。
普通車を年度途中で永久抹消した場合などには月割還付が生じることがありますが、名義変更や一時抹消、軽自動車税では扱いが同じではありません。登録窓口だけでなく、都道府県税事務所または市区町村へ確認してください。
自動車は相続税の対象となり得る財産です。国税庁の自動車などの評価方法は、原則として売買価額や専門家の意見などを参考に評価するとしています。遺産全体の申告要否は、相続税の基礎控除と申告チェックも併せて確認してください。
相続放棄を検討中は売却・廃車を急がない
相続放棄を考えている場合は、車を売る、廃車にする、自分名義に変えるなどの処分を先に行わないでください。遺産の一部を処分すると、相続を承認したと判断される可能性があります。盗難防止や事故防止のための保管と、財産を自分のものとして処分する行為は分けて考えます。
裁判所の相続放棄の申述案内では、原則として自己のために相続開始があったことを知ったときから3か月以内としています。ローン残債、税金、事故歴などが不明なら、相続放棄の期限と必要書類を確認し、家庭裁判所や弁護士・司法書士へ早めに相談してください。
手続きチェックリスト
- 車検証で所有者・使用者・車検期限を確認した
- 鍵、車検証、自賠責、任意保険、納税書類を保管した
- ローン会社・販売店名義なら契約先へ連絡した
- 車を取得する相続人と売却代金・費用の扱いを決めた
- 普通車か軽自動車かに応じて申請先へ必要書類を確認した
- 新しい使用場所の車庫証明・保管場所届出を確認した
- ナンバー交換と車両持込みの要否を確認した
- 車検、自賠責、任意保険の補償を確認するまで運転していない
- 売却・廃車後の登録完了書類を受け取る予定を決めた
- 税金、査定額、ローン残債を相続財産一覧に記録した
長期間動かさない車は、道路上ではなく使用権限のある駐車場所に保管します。バッテリー上がり、タイヤの空気圧、燃料劣化、車内の貴重品、スペアキーの所在も確認し、動かす必要があるときは整備業者へ相談してください。
よくある質問
死亡後も家族がそのまま乗ってよいですか?
家族だから自動的に運転できるとは限りません。所有者、車検、自賠責、任意保険の運転者範囲と年齢条件を確認し、保険会社へ死亡と今後の使用者を伝えてから判断してください。車検切れや無保険の状態では公道を走れません。
相続人が複数いる場合、代表者だけで手続きできますか?
代表者が窓口へ行くことはできますが、車を誰が相続するかについて必要な同意や書類まで省略できるとは限りません。遺産分割協議書、申立書、委任状など、相続方法と車の種類に応じた書類を申請先へ確認してください。
車検証が見つからない場合はどうしますか?
まず車内、保管書類、整備工場、販売店を確認します。見つからない場合は、再交付の申請先と必要書類を運輸支局または軽自動車検査協会へ確認してください。登録番号や車台番号が分かる資料も集め、第三者へ安易に車を引き渡さないでください。
制度内容の確認日:2026年8月29日。自動車の相続による移転登録、必要書類、車庫証明、ナンバー、手数料、税金、保険の扱いは、普通車・軽自動車の別、車検証の所有者、車検の有効期間、使用場所によって異なります。申請前に管轄窓口の最新案内を確認してください。
まとめ
親が亡くなった後の自動車手続きは、車検証の所有者確認から始めます。親本人の所有なら相続財産として取得者を決め、普通車は運輸支局等、軽自動車は軽自動車検査協会で名義変更します。販売店・ローン会社名義なら、所有者の同意と残債確認が先です。
売却や廃車を選ぶ場合も、相続関係と登録の完了を確認します。車検、自賠責、任意保険の条件が分からないまま運転せず、相続放棄を検討中なら処分前に専門家へ相談してください。迷ったら、車検証を手元に置いて管轄窓口へ問い合わせるのが最短です。


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